子に株を相続させる意外なメリット

2023/02/26

資産運用

100万円の預貯金を遺産として子供に相続させるより、同額の株式を遺した方が有意義かもしれない。

最近、こんなことを考えるようになりました。

別に、現金より株の方が成長性があるとか、税制上どうだとかいった合理的な話ではありません。単なる心の問題です。

というわけで今回は、心理学的視点で考えた相続財産選びについて考察します。




「お母さんの株が頑張ってる」

こんなことを考えるようになったきっかけは妻の言葉でした。

「いや~、ANAの含み損はいつ見てもすごい。お母さんのことだから、きっと営業マンに勧められてバカ高い時期に買っちゃったんだろうな」

妻のノートパソコンに映し出されていたネット証券の管理画面をのぞくと、確かに保有する全日空(ANA)株がかなりの含み損を抱えています。

「でも、日本郵船のほうは割と健闘してるんだよね。コロナでも下がらなかったし、配当もいっぱい出てる。ありがとう、お母さん」

株価チャートを見ると、確かに妻の言う通りです。昨年受け取った配当金も20万円を超えていました。


この2銘柄は、妻が母親から相続したものです。

遠く離れて暮らしていた妻の母、つまり僕の義母は、去年の春に亡くなりました。

彼女は生前、株式投資をやっていましたが、専業主婦なので大した額ではありません。遺産自体も微々たるものです。

親族で遺産分けの話し合いをした結果、預貯金は妻の姉が、株式は妻がそれぞれ相続することになりました。

株の相続は次のような手順を踏む必要があります。

  1. 義母が使っていた大手証券会社に妻名義の口座を作る。
  2. その新設口座へ義母の口座から株を移す。
  3. さらに、その新設口座から妻が普段使っているネット証券口座へ株を移す。

少々面倒くさい作業でしたが、以来、妻はパソコンで株価をチェックするたびに「お母さんの株が最近頑張ってる」「母さんの株がちょっと苦戦してる」などと口にするようになりました。

その様子を見ていると、「ああ、この2銘柄は義母の形見として機能しているんだな」と感じます。

銘柄に故人のイメージが重なって、株価が動いたり配当が出たりするたびに、妻は母親のことを思い出しているのです。相続したのが預貯金だったら、なかなかこうはならないでしょう。

僕はこれを「形見効果」と呼ぶことにしました。


「形見効果」の高い資産

人が人へモノをプレゼントを贈る際の目的はいろいろありますが、「これを私だと思って大切にして欲しい」「これを見て私のことを時々思い出してほしい」という願望は、かなり大きな要素だと思います。


プレゼントされる側の利便性を考えれば、現金を贈る方が明らかに合理的なのに、多くの人が現金ではなくモノを選ぶ理由の一つはここにあります。

遺産相続というのは能動的なプレゼントとはちょっと違いますが、「死んだ後も時々思い出して欲しい」と願うなら、100%預貯金で遺すより、少しだけでも株を混ぜて形見効果を発揮させた方がいいのかもしれません。

もちろん、不動産や美術品にも形見効果はあるでしょう。

TVドラマなんかでは「この家は死んだ父ちゃんが残してくれた大事な宝物なんだ!」といったセリフを聞くこともあります。

ただ、こういう現物資産は子供にとって負担にもなりえる諸刃の剣です。

居住地から遠く離れた土地建物は利用しづらいし、管理に手間も費用もかかる。美術品にしても、それなりに気を配って保管する必要があります。

その点、株は相続人に手間を強いることがありません。

しかも、値動きや配当といった折々のアクションを通じて故人を思い出すきっかけを作ってくれるわけだから、形見効果はすこぶる高い。

仮に値下がりしたところで、もともと「もらい物」なんだから、相続人が深刻なダメージを被るわけじゃない。

考えれば考えるほど、旅立つ際に家族へ贈るプレゼントとして最適なんじゃないかと思うわけです。

自分らしい銘柄は?

こういうことを考え始めると、限りなく妄想が広がっていくのが僕の性分です。

形見効果を狙うなら、無味乾燥なインデックスファンドより、イメージの湧きやすい個別株のほうがいいよな。

どうせなら自分らしさを感じさせる銘柄を選びたい。

ビール好きならアサヒやサッポロ、虎ファンやヅカファンなら阪急阪神HD、車好きならトヨタや日産といった具合に。

僕の場合は何だろう。長年勤めた新聞社か?

いやいや、新聞社って「編集権の独立」を重視しているから株式公開なんてやってない。

そもそも新聞業界の株なんて将来性がなさすぎる。

やはり無味乾燥でも、子孫に遺すなら全世界株式インデックスファンドか………。

子持ちの方は是非いつか、終活の一環として「形見にする銘柄」を検討してみてください。


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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