40代無職が選ぶ2022年の10大ニュース(後編)

2022/12/15

時事ニュース 新聞業界

 前回に引き続き、暇にまかせて選んだ今年の10大ニュースをお送りします。今回は第5位~第1位の発表です。

第5位 東京地検が五輪汚職を捜査

2021年東京五輪の組織委員会理事を務めた元電通マンが、スポンサー企業から賄賂を受け取っていた疑いで逮捕された事件です。

「最強の捜査機関」と呼ばれる東京地検特捜部が久々に手掛けた大型案件。それも政府・与党が強力に推し進めてきた東京五輪の利権に切り込むわけだから、本来なら「政治権力vs捜査権力」の構図となって大いに盛り上がりそうなところですが、どうもそうはならないみたいです。

一時期、憶測が盛り上がっていた「政界ルート」への波及はないまま、11月に入って捜査は収束モードに。メディア関係者からは「しょせん今の検察に政権と事を構える気概はない」と失望する声もあがっています。

実は僕も、今回の捜査には当初から冷めた目を向けていました。というのも、近年の検察にはあまり「正義」を感じないからです。

安倍晋三元首相が盤石の一強体制を築いていたころは、森友文書の改竄問題でさえ立件を見送るほど大人しくしていたのに、安倍氏がいなくなった途端、捜査機関としての存在感を主張し始める……やっぱり検察も空気を読むお役所なんだなあ、という印象です。

まあ、それでも、五輪の闇の一端が世間に知れ渡っただけでも大きなニュース。そう考えて第5位に選びました。


 第4位 米金利上昇で記録的円安

資産運用と節約で生計を立てている身には、一年を通じてずっと気になっていたニュースです。

その影響はすさまじく、2020年のコロナショック以降、快調に上昇を続けてきた米国株は年明け早々から低迷するし、スーパーへ行くたびに食料品がジワジワ値上がりしているのを肌で感じるし、閉塞感や不安感が漂いました。

その反面、保有するドル定期預金には大きな含み益が発生。金利が上昇したタイミングで定期を組み直したことにより、今後3年間は年3%の利息を得られるようになったというメリットもありました。

もっとも、肝心の円預金の実質価値が目減りしているわけだから、喜んでいる場合ではありません。

米国の利上げが打ち止めになったら再び以前のような為替相場に戻るのか。それとも、日本の国力低下とともに円もどんどん弱くなっていくのか。来年も目が離せません。

第3位 朝日新聞編集委員、週刊誌に「ゲラ見せろ」

世間の関心度はそれほど高くないかもしれませんが、元新聞記者としては驚きあきれる大ニュースでした。

今年3月、朝日新聞のM編集委員(4月に退職、現青山学院大客員教授)が安倍晋三事務所からの依頼を受け、週刊ダイヤモンドの副編集長に対し、掲載前の安倍氏のインタビュー記事のゲラ(予定紙面)を見せろと要求した、という話です。

その際のセリフがすごくて、「安倍総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「ゴーサインは私が出す」などと発言したとか。にわかに信じがたい言葉ですが、当の本人が事実関係を否定せず、自身のブログ(note)で「誤報を阻止しようと行動した」などと正当性を主張しているのだから間違いないのでしょう。

いや、もう唖然としました。

いくら特ダネを連発しても、いくら鋭い情勢分析ができても、ジャーナリストが政治家の番犬のごとく振る舞うようになったらオシマイです。しかも、会社から懲戒処分を受けてなお、自分がやったことのヤバさを全く自覚していないとは……。これでは「安倍事務所の検閲代行業者」と言われても仕方ないでしょう。

せめてもの救いは、ダイヤモンド側がこの不当な要求を突っぱねたうえ、朝日新聞社に抗議したお陰で、M氏の行為が白日の下にさらされたことでしょう。それにしても、「権力チェック」をウリにしている報道機関の中にも、こういう人間がまぎれこんでいるものなんですね……。 


第2位 ロシア軍、ウクライナ侵攻

世界史的に見れば、これが今年ダントツのトップニュースでしょう。

第二次世界大戦や冷戦や様々な民族紛争を経て、世界は少しずつ良くなってきているんじゃないかと能天気に考えていましたが、それがいかに甘い認識だったかということを思い知らされました。地球上に数多く存在する核保有国のリーダーのうち、たった一人が変な考えに取りつかれただけで、世界はたちまち収拾困難な混乱に陥ってしまうということですね。

今年2月に始まったこの戦争、終結しないまま2023年に突入する見通しとなりました。ロシア国内でプーチン大統領を失脚させるような動きが早く出てこないかと期待しているのですが、なかなか難しそうです。

ところで、この戦争に関する一連の報道の中で強く印象に残ったのが、報道統制されたロシアのテレビ局で、ニュース番組の放送中に一人の女性社員がスタジオに乱入して反戦を訴えたというニュースでした。

その際、彼女が掲げた紙には「プロパガンダを信じないで」の文字が。まさに命がけの意思表示。臆病な僕にはとても真似できそうにありません。ちなみに、彼女はその後、ロシア警察に身柄を拘束されて罰金刑を受けましたが、現在は娘と一緒に国外に亡命しているそうです。


 第1位 安倍晋三元首相暗殺

ウクライナ戦争とどちらを1位にするか迷ったのですが、日本に住む僕の仰天度で選べば、やはりトップはこちらのニュース。これほど心の底から驚いた出来事というのは、記者人生を振り返っても2001年の米同時多発テロと2011年の東日本大震災くらいしか思い浮かびません。


一報にふれた時は1963年のケネディ暗殺事件が頭をよぎり、しばらく経ってから、日本の総理経験者が殺されるのって二・二六事件以来じゃないかと気づいて呆然。さらにその後、容疑者の犯行動機が「安倍氏と旧統一教会の関係」だと知って、またびっくり。本当に驚かされっぱなしでした。

安倍氏といえば、かつてない自民党一強体制を築きあげ、総理在任期間の歴代最長記録を塗りかえた一方、モリカケ問題や桜を見る会問題で「権力の私物化」を指摘されてきた超大物政治家。人によって非常に好き嫌いのわかれる人物ですが、まさかこのような形で人生を終えるとは思ってもいませんでした。もちろん、このようなテロが絶対に許されないことは言うまでもありません。

それにしても不甲斐なく感じたのは、事件から当分の間、旧統一教会の名前を伏せて「ある宗教団体」と報じ続けていた新聞・テレビの臆病すぎる報道姿勢です。

「まだ供述の段階だから慎重に報じよう」「下手に名前を出したらどんな抗議がくるかわからない」といった葛藤や懸念があったことは理解できますが、教団側が記者会見を開くまで全社横並びで匿名報道を続ける様子は少し異様に映りました。

「これほどの歴史的事件なんだから取材でつかんだ情報はガンガン出していく」という冒険心を発揮するメディアが1社くらい出てきてほしかった。それが正直な気持ちです。

がんばれ、新聞! このままじゃネット社会を生き残っていけないぞ。

  ◇  ◇  ◇

というわけで、40代無職が選ぶ今年の10大ニュースの紹介を終わります。

独断と偏見をまじえて書きなぐってきましたが、気に障るような表現がありましたらどうぞご容赦ください。

ではまた。


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。ただいま49歳。

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