今回は、専業主婦(あるいは主夫)が新NISA制度を使って投資をする場合、思わぬ形で贈与税が発生してしまうかもしれない、という話です。
昨年末、NISA制度の抜本的な改革内容が決まり、2024年から年間の投資上限額が大幅に引き上げられることになりました。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)
多くの個人投資家と同じく僕も大喜びしましたが、最近、ある心配が頭に浮かぶようになりました。
収入のない主婦が、夫が稼いだお金を原資に、自分名義のNISA口座で投資する場合に起こりうる贈与税の問題です。
夫の給料で妻が投資すれば贈与?
現在の日本の税制では、人から年間110万円を超えるお金をもらった時は、110万円を超えた部分に対して贈与税が課せられます。それは夫婦間でも例外ではありません。
例えば、夫が妻に360万円をプレゼントしたら、超過部分の250万円に税率15%をかけ、控除額10万円を差し引いた金額、つまり27万5000円を贈与税として納める羽目になります。(贈与額に応じて税率や控除額は変わります。詳しい計算方法はこちら。なお、夫が妻に渡す生活費や教育費は贈与税の対象外です。)
こうしたこともあって、インターネット上では以前から「夫が稼いだお金で妻がつみたてNISAをしたら贈与税を取られるの?」といった心配の声がチラホラ見受けられました。
しかし、現行のつみたてNISA は年間の投資上限額が40万円なので、そもそも贈与税の対象にはなりません。だから「つみたてNISAの範囲内で投資している限りは気にしなくていい」というのが従来の答えでした。
しかし、年間の投資上限枠が360万円に引き上げられた新NISA制度の下では、こうも言っていられなくなります。
専業主婦の妻が自分名義の NISA 口座で年間360万円の投資をしたら、「夫から360万円の贈与を受けた」と見なされ、贈与税を課されてしまうのではないか?
そう思って金融庁のホームページ をチェックしてみましたが、この件に関する説明は見当たりませんでした。
税理士の見解は「贈与に該当」
それでも気になるので、いろいろ情報を探してみると、ある税理士がインターネット上でこの疑問に答えていました。
曰く、「贈与税の対象となる贈与に該当すると思われます」。(詳しくはこちら)
ああ、やっぱり! 税金が発生してしまう可能性が高いようです。
これは僕の想像ですが、この事実を認識している人って、世の中にあまりいないのではないでしょうか。
一般的な家庭の場合、サラリーマンの夫が自分名義のNISA口座で年間360万円の非課税投資枠を使い切ったうえ、さらに主婦である妻に110万円超の投資資金を渡すというのは経済的に難しいと思いますが、全くそういうケースがないとは言い切れません。
例えば、新NISAのスタートに合わせて、それまでに蓄えた銀行預金で本格的に投資を始めようと考えている夫婦。
あるいは、「徹底的に倹約し、給料の大半をNISAにぶちこんでFIREするぞ!」と意気込んでいる夫婦だっているでしょう。
こういう家庭なら、そうと知らずに贈与税という地雷を踏んでしまうかもしれません。非課税制度を利用した結果、別の新たな税金が発生するなんて悪夢のような展開です。
金融庁や国税庁の考えは?
ここはやはり、金融庁や国税庁の考えをハッキリ知りたいところ。
もし、さきほどの税理士の見解通りなのだとすれば、主婦が新NISAを利用する場合は、年間110万円の範囲におさめるとか、結婚前から貯めていたお金を使うとかいった工夫が必要になりますからね。
新NISAのスタート後に余計な混乱を起こさないためにも、両庁はこの問題についての見解を取りまとめ、今からしっかり広報しておいたほうがいいと思います。
おすすめ記事:新NISAの成長投資枠で何を買うべきか