FIRE後もiDeCoに掛金を払うべきか

2022/12/08

iDeCo 退職時の手続き

今回のテーマは、現役時代に企業型確定拠出年金(企業型DC)を積み立てていたサラリーマンがFIREを達成した場合、個人型確定拠出年金(ideco=イデコ)に新たな掛金を出し続けるべきなのか、という問題です。


ご存じの通り、現役時代に企業型DCを積み立てていたサラリーマンが会社を早期退職した場合、半年以内に自分で金融機関にイデコ口座を開設し、それまで積み立てた資産を移すことになります。(※詳しくはこちらの記事で解説しています)

問題はその後。新しく開設したイデコ口座に、現役時代と同じく積み立てを続けるかどうかを決めなくてはいけません。

僕のように完全に仕事を辞めてフルFIREした人の場合、選択肢は主に二つです。

一つは、自分がそれまでに貯めたお金を原資にして、毎月の掛金をイデコ口座へ入れ続けるというもの。この場合、イデコで非課税運用する資産は積みあがってゆきますが、国民年金基金連合会や信託銀行へ毎月171円の口座管理手数料を払い続けることになります。(※掛金の積立を年1回にして手数料を抑えることもできます)

もう一つの選択肢は、イデコに新たな掛金を入れるのはやめて、現役時代に積み立てた資産だけを運用していくという方法です。この場合、毎月の口座管理手数料のうち国民年金基金連合会の取り分105円が不要になって、信託銀行の取り分66円のみとなります。しかし当然のことながら、非課税運用する資産の元本は増えていきません。

(このように、イデコ口座は持っているけど新たな掛金は出さないという人のことを、通常の「加入者」と区別して「運用指図者」と呼びます。いったん運用指図者になった人が、再び加入者に戻って掛金を払うことも可能です。)

 iDeCoと早期リタイアの相性

さて、どちらを選ぶべきでしょうか。


読者のみなさんの中には「手数料の差なんて微々たるものだから、これからも掛け金を出して非課税運用できる資産を増やした方がいいんじゃないか」と思う方もいると思います。

しかし僕は悩んだ末、掛金はもう積み立てないという選択をしました。つまり、運用指図者になるということです。

なぜなら、自分のお金を原資に毎月掛金を払い続けたとしても、60歳になってイデコ口座の資産から一時金や年金を受け取ろうとすれば、そのお金が「収入」だとみなされて課税されてしまうからです。

 これっておかしいと思いませんか?

だって、この場合の掛金って、現役時代に自分が稼いで、税金を払って、そのうえで貯めてきたお金なんですよ。それをいったんイデコの口座に入れて、あとで取り出したら、またそれが課税対象になってしまうなんて……。

はっきり言って税金の二重払いです。いくら運用益が非課税だとしても、これはあんまりです。

実はここに、イデコと早期リタイアとの「相性の悪さ」があるのです。

そもそも iDeCoのメリットは?

ここで簡単にイデコの仕組みを説明しておきましょう。

一般にイデコのメリットとされているのは次の三つです。

  掛け金が全額所得控除される。つまり、イデコに積み立てた分だけその年の収入が減ったとみなされ、所得税や住民税が軽くなる。

  運用益が非課税。普通なら100万円の資産が投資で150万円になったら、利益分50万円に対して約20%の税金を取られるが、イデコではこれが免除される。

  受け取り時の優遇。60歳になってイデコ口座から一時金や年金を受け取る時、退職所得控除や公的年金等控除を使って税金を軽くすることができる。

このうち①と②は間違いなくイデコのメリットだと思います。しかし③はどうでしょう。「税金を軽くすることができる」と言えば聞こえはいいですが、要するに、受け取るお金が課税対象にされてしまうということです。しかも、運用益の部分だけに税金がかかるのではなく、受け取る金額すべてを収入と見なして税額を算出するのです。

収入がない人は割に合わない

つまり、①で支払いを免れた税金というのは、完全に免除してもらったわけじゃなくて、支払いを先送りしてもらっただけだと考えるべきでしょう。その先送りした税金を60歳になって支払う時に、③の優遇措置を受けられるという話なんです。

この点を踏まえたうえで、改めて僕のケースを考えてみましょう。

早期リタイアした僕の場合、そもそも収入がないから①のメリットはありません。なのに、60歳になってお金を受け取る時はしっかり課税されてしまうわけだから、③の優遇措置を適用してもらったところで全く割に合いません。

結局、僕が実質的に享受できるメリットは②の非課税運用のみですが、これだけのために、現役時代に貯めたお金を取り崩してまで掛金を捻出すべきでしょうか。

確かに、運用で大きな儲けが出れば非課税の恩恵は大きいでしょう。しかし、利幅が小さかったり、トントンだったり、元本割れするような場合は、余計な手数料や受け取り時の税金がかかる分、イデコを使わず普通に資産運用した方がマシな結果になるでしょう。しかも、イデコには60歳までお金を引き出せないというデメリットもあります。

というわけで、僕の結論は「リタイア後はイデコへの積み立てはやめる」となりました。

主婦のiDeCoってどうなんだろう

これからFIREを目指す人にアドバイスするなら、収入のある現役時代は企業型DCやイデコを最大限利用して節税メリットを享受し、収入がなくなったら運用指図者になって最低限の手数料だけ払う、という戦術が今のところ一番いいように思います。

なお、イデコは近年の制度改正によって、収入のない専業主婦でも加入できるようになりました。金融機関の中には「主婦にもメリットがある」と公式サイトでうたっているところもありますが、僕は上記のような理由からやめた方がいいと思っています。やはりイデコは、安定した収入があるからこそ旨味のある制度なのです。

〈補足〉

「リタイア後はイデコに掛け金を入れない方がいい」という僕の考えには例外があります。それは、あと少しで確定拠出年金の通算の加入期間(=企業型DCやイデコで掛け金を払っていた期間。運用指図者だった期間は含まない。)が20年を超えるという場合です。というのは、加入期間が20年を超えると、イデコの資産を一時金で受け取る場合の退職所得控除の計算式がガラリと変わり、税金がゼロになる可能性が著しく高まるからです。参考までに計算式を紹介しておきます。

【通算の加入期間が20年以下の場合】

  退職所得控除=40万円×加入期間の年数

【通算の加入期間が20年超の場合】

  退職所得控除=70万円×加入期間の年数+800万円

※受け取る一時金が退職所得控除以下だと税金はゼロになります。

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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。ただいま49歳。

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