国民健康保険 軽減制度の「落とし穴」

2022/12/01

健康保険 退職時の手続き

 

今回は、会社を辞めて国民健康保険の軽減制度を利用している元サラリーマンが注意すべき「落とし穴」について話します。一言でいえば、「制度適用後に別の街へ引っ越せば、保険料の軽減効果がリセットされてしまう」というお話です。

このことに気づかず、軽減前の高額な保険料を銀行口座から引き落とされている人は、世の中に意外と多いのではないでしょうか。何を隠そう、僕自身がそうでした。というわけで、僕の体験談をもとに注意点を説明していきます。


●引っ越し後に高くなった保険料

僕は新聞社の早期退職優遇制度で会社を辞めた後、当時住んでいた街の市役所で国民健康保険に加入し、失業者のための保険料軽減制度を受けることにしました。これにより、僕の退職前の給料なら本来約90万円もかかる初年度の保険料が、約50万円に抑えられることになりました。

で、市役所から保険料の金額決定通知が届いたところで、僕は銀行口座からの引き落とし手続きを済ませ、無事に国保デビューを果たしました。ここまでは前回の記事で詳しく書いている通りです。

トラブルが起きたのはその翌年、僕たち一家が別の街へ引っ越した後のことです。

(※軽減制度の適用期間は自治体によってまちまちで、1年間の自治体もあれば、2年間の自治体もあります。僕が引っ越した街は退職日から最長2年間となっています。)

引っ越しに際して僕は通常の手順通り、旧住所の市役所で国民健康保険の「資格喪失」の手続きを、新住所の市役所で国民健康保険の「新規加入」の手続きを済ませていました。

新住所の市役所の担当職員からは「近いうちに、旧住所の市役所にあなたのデータを照会し、それをもとに保険料を決定します」と説明を受けていたので、僕は何も心配していませんでした。

ところが、引っ越しから数カ月が過ぎたある日、パソコンで銀行口座の利用明細を眺めていた僕はある異変に気づきました。

引っ越し前に毎月引き落とされていた保険料より、引っ越し後に毎月引き落とされている保険料の方が随分と高額なのです。


●申請したら還付金7万円

これは何かおかしい。直感的にそう感じました。

もちろん、国民健康保険の保険料は自治体によって計算方法が微妙に違うので、前年所得や家族構成が同じであっても同額になるとは限りません。でも、それにしたって高すぎないかと思うくらいの違いでした。

こういう時はすぐ行動するに限ります。早速、市役所に電話して疑問をぶつけました。

その結果、恐ろしいことが発覚しました。

旧住所の市役所で適用されていた保険料の軽減措置が、引越し先の市役所に引き継がれていなかったのです。

役所間の引継ぎミスなのかと思いきや、さにあらず。こういう軽減制度は各自治体が独自に定めているものなので、僕の方が引っ越し先で自発的に申請をやり直さなければならないということでした。

そこで言われた通り申請したところ、後日、引っ越し時にさかのぼって「取られ過ぎていた分」が還付金として戻ってきました。

その額、7万円余り。ああ、電話してよかった。


 ●知らない者は損をする

しかし、それにしても……。

たまたま銀行口座の利用明細を見て気づいたから良かったものの、世の中にはどこに落とし穴があるかわかったもんじゃありません。

そもそも、引っ越しの前後に両方の市役所窓口であれだけ手続きをしたのに、「申請のやり直しが必要だよ」なんて誰も教えてくれなかったじゃないか! ……そう叫びたいところですが、読者のみなさん、行政サービスとはそういうものなんです。

この日本には市民生活を助ける様々な公的制度が用意されていますが、それらは基本、マメに申請する人だけが恩恵を受けられます。だから、知識がない者、ボーッとしている者は常に損をする。世の中はそういう仕組みになっているのです。

特に、僕みたいにサラリーマン生活が長かった人間は、税金・年金・健康保険といった面倒くさい手続きを全部会社にやってもらっていたわけだから、この種のサバイバル能力が著しく退化する傾向にあります。

ゆくゆくは会社を早期退職して独立したい、あるいはFIREしたいという野望を持っている方は是非このことを忘れないでください。

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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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