企業型確定拠出年金をiDeCoへ移す際の注意点

2022/12/06

iDeCo 退職時の手続き

(2024年3月19日更新)

サラリーマンが早期退職した時にやる手続きと言えば、健康保険と年金の切り替え、失業手当の申請が定番ですが、ここにもう一つ重要案件があります。

現役時代に積み立ててきた企業型確定拠出年金(企業型DC)を個人型確定拠出年金(個人型DC、愛称はiDeCo=イデコ)に切り替える作業です。

なかなか面倒くさい手続きですが、これをテキトーにやってしまうと、後々まで余計な手数料を支払うハメになりかねないので注意が必要です。僕自身もこの件ではかなり頭を悩ませました。

というわけで今回は、企業型DCをイデコに切り替える際の注意点を解説していこうと思います。

(※「うちの会社には企業型DCの制度がない」という方は、この記事を読む必要はあまりありません。でも、暇つぶしに読んでくれたら嬉しいです。)



●企業型DCとは

まずは制度の基本を押さえておきましょう。

企業型DCとは簡単に言うと、企業が用意したお金を使って社員が資産運用し、将来の退職金や年金を準備していくという制度です。

まず、勤務先の会社が、提携先の金融機関にDC口座を開設して、それぞれの社員ごとに退職金の原資となる掛け金を積み立てていきます。一方、社員はその掛け金に上乗せする形で、自分の給料から毎月一定額を天引きして積み立てていくことができます。これをマッチング拠出と言います。(会社によってはマッチング拠出ができないこともあります。)

すると、そのマッチング拠出した分だけ社員の収入が減ったとみなされて、毎年の税金が安くなる。これが第一のメリットです。

社員たちはDC口座の中にあるお金を定期預金の形で寝かせておいてもいいし、投資信託を買ってガンガン運用してもいい。そして運用益が出た場合、本来かかるはずの税金が免除される。これが第二のメリットです。

ただし、いったんDC口座に入れたお金は60歳になるまで引き出せません。また、60歳になってDC口座から退職金や年金を受け取る際は、収入とみなされて課税されます。とはいえ、通常の給料にかかる税金と比べれば軽めに設定されているので、この制度を利用すればトータルで大きな節税効果が期待できるというわけです。

以上が企業型DCの概要です。


●退職後半年以内にiDeCoへ引っ越せ

では、僕のように60歳になる前に早期退職した場合、勤務先のDC口座の中にある資産はどうなってしまうのでしょうか。

ちなみに、僕が会社を辞める時、DC口座には約180万円分の資産ありました。てっきり、退職したタイミングで手元に払い戻されるのかと思っていましたが、そうではありませんでした。そう、ここでイデコの出番がやってくるわけです。

イデコとは、個人型確定拠出年金という名前の通り、会社に所属していなくても企業型DCとよく似た節税メリットを受けることができる制度です。

会社を辞めてフリーランスや無職になった人は、自分でどこかの金融機関にイデコ口座を開設し、それまで会社のDC口座に入っていた資産を引っ越しさせることになります。これにより、引き続き60歳になるまで非課税運用を続けることができるわけです。

ただし、この引っ越し作業は退職後6カ月以内に終わらせないといけません。

この期限を過ぎると、DC口座の資産は、「国民年金基金連合会」というイデコの総元締めのような団体の管理下に置かれ、バカ高い手数料を取られるなど様々な不利益を受けることになります。だから、もしあなたが会社を辞めたら、できるだけ早く金融機関を決めて手続きを始めないといけないのです。

●金融機関選びのポイントは手数料

ただし!

急ぐからといってテキトーに金融機関を決めてはいけません。なぜなら、世の中には「ここを選んだら確実に余計な手数料を取られる」という地雷のような金融機関がいくつも存在するからです。

ここで補足しておくと、このイデコという制度、一般的には「様々な税制優遇を与えてくれる優しい制度」といったイメージで語られがちですが、その実態は「税金をお目こぼしする代わりに利用者から手数料をたっぷり絞りとる」という油断ならない側面があります。


その手数料は多重構造になっていて、まずは先ほど登場した「国民年金基金連合会」なる団体が、あなたの資産から加入時の手数料(2829円)と月々の口座管理手数料(毎月105円)をまきあげます。

次に実際の資産運用を担う信託銀行の取り分(毎月66円)が抜かれるので、月々の手数料は合わせて毎月171円となります。残念ながら、これらの手数料はどの金融機関で口座を開設しても免れることはできません。

そして、これにさらに上乗せする形で、あなたが口座を作った金融機関が独自に設ける口座管理手数料が毎月徴収されまることになります。これは各社の営業方針によって0円~数百円と金額はバラバラです。

わかりやすく言えば、「せっかくだからたっぷり手数料を取ってやろう」と考えている金融機関もあれば、「なるべく手数料は取らないで多くの顧客を獲得しよう」と考えている金融機関もあるわけです。もちろん、選ぶべきは後者です。

「でも、手数料を一つ一つ調べるのって面倒だな」と感じる人もいるでしょう。しかし、今はいい時代です。インターネットの検索サイトに「イデコ 手数料 比較」などと入力すれば、各社の手数料を一覧にまとめたサイトがいくつもヒットします。

ざっと見たところ、最も網羅性が高いのは「iDeCoナビ」というサイトでしょうか。

●おすすめはネット証券、今ならSBIが最有力

まあ、詳細はそういったサイトにゆずりますが、ごく大雑把に言っておくと、ゆうちょ銀行やメガバンク、各県の地方銀行や信用組合といった比較的なじみ深い金融機関はほぼ軒並みアウトです。

中には上乗せ手数料を取らない良心的なプランを用意している銀行もありますが、そういうプランには「扱う投資信託の品ぞろえが乏しい」といった短所があり、あまりおすすめできません。

では、どこが狙い目なのかと言えば、それはSBI証券、楽天証券、マネックス証券といったネット証券会社です。彼らは実店舗を持たないかわりに、独自のポイントサービスや手数料の安さで勝負していますから、イデコの上乗せ手数料も当然ゼロ。このグループから選べば、まず地雷は避けられると思っていいでしょう。

さらにこだわりたい人は、各社がイデコ用にそろえている投資信託のラインナップやポイントサービスの中身をじっくり見比べることをおすすめします。

「投資信託のラインナップと言われても、どういう商品があればいいのかさっぱりわからない」という方は、以下の一覧表を参考にしてください。


ここに挙げたような低コストで資産規模の大きいインデックスファンドをきちんと扱っている証券会社を選べば、まず大丈夫でしょう。(→超初心者向け!インデックスファンドの賢い選び方

ちなみに、僕が選んだのは楽天証券でした。もともと楽天のクレジットカードを愛用していたので、楽天証券を利用することでポイントがたまるメリットがあったからです。

しかし、今だったら楽天証券ではなくSBI証券を選ぶでしょう。というのは、僕が早期退職した2020年当時は、楽天証券のポイントサービスが「業界№1」と言える状況でしたが、その後サービスの改悪が相次ぎ、2024年の今は明らかにSBI証券の方がポイントサービスが充実していると感じるからです。

まあ、そうは言っても、このあたりは微妙な差なので、上乗せ手数料の地雷さえ踏まなければそこまで神経質にならなくてもいいでしょう。

 

はい。早期退職後に企業型DCからイデコへ資産を移す際の注意点は、これで大体ご理解いただけたのではないかと思います。

ただ、イデコに関してはもう一つ、悩ましい選択が残っています。それは「リタイアした後もなお、イデコの積み立てを続けるべきなのか」という問題です。次回はこのことを考えてみたいと思います。

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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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