(2024年3月10日更新)
「投資初心者にはインデックス型の投資信託がおすすめだという話を聞いたけど、その中から具体的にどれを選べばいいのかわからない」
このブログを読んでくれている方の中には、こんな悩みを抱えている投資未経験の方もいらっしゃるのではないかと思います。
そこで今回は、初心者むけにインデックスファンド(インデックス型投資信託)の賢い選び方を解説してみることにします。
資産運用に全く縁がなかった4年前の自分に一から言い聞かせる気持ちで、できるかぎり簡単に説明しますので、ぜひ最後まで読んでください。
初心者が投資を始めようとしても、まず、この選択肢の多さに圧倒され、何から手を付けていいのかわからなくなってしまうというのが実情でしょう。
で、銀行窓口や保険会社の営業マンに「投資を始めたいんですけど、何がいいのかよくわからなくて……」と相談し、手数料のバカ高いアクティブファンドや外貨建て保険をつかまされる、というのがよくある失敗パターンです。
だから僕の感覚でいうと、数ある投資商品の中からインデックスファンドというジャンルを選んだ人は、もうそれだけで最初の勝負に勝ったようなものだと思います。
しかし、そこからさらに一歩進んで特定のファンドを選ぶとなると、インデックスファンドだけでもそれなりの数があるのでまた迷ってしまいます。
「信託報酬が安くて純資産総額の大きいファンドを選ぶといいよ」などとアドバイスされても、初心者にとっては、そもそも数ある投資信託の中でどれがインデックスファンドなのか見分けることすら難しいでしょう。
だから、僕もこのブログでインデックス投資について書くときは、これがいいと思うファンドの名前を明記するようにしてきました。具体的にはこんな感じです。
ただ、こういうふうに具体名を挙げると、「なんでこの商品なの?」「他とどう違うの?」といった疑問を抱く人もいるでしょう。
そこでここからは、僕がどういう基準でこれらのファンドを絞り込んだのかということを説明していきます。
基準は「投資先・コスト・規模」
ではまず、僕が重視するファンド選びの基準を3つ挙げておきます。
① 投資先が将来有望なジャンルであること。
② 運用コストが安いこと。
③ 規模が大きいこと。
以上です。
もったいぶった書き方をしていますが、ここに僕のオリジナリティーは何もありません。インデックス投資の入門書には必ず書いていることばかりです。
投資先は米国株or先進国株or全世界株
まずは①の投資先。「将来有望」というのは、長期的にみて右肩上がりで成長していく可能性が高いという意味です。
インデックスファンドの投資先には、日本株、米国株、先進国株、新興国株、全世界株、国内債券、外国債券など様々なジャンルがありますが、この中で右肩上がりの成長が期待できるのはどれか?
将来予測とは常に不確かであてにならないものですが、少なくとも過去数十年~百年レベルの実績を見ると、最もきれいな右肩上がりを描いてきたのは米国株です。
ご存じのように、日本株はバブル崩壊以降、長期にわたって低迷。2024年になってようやく日経平均が34年ぶりにバブル超えを果たしましたが、少子高齢化が進む日本社会の現状を考えると、今後の見通しが明るいとは言い難い状況です。
また、新興国株は爆発的な成長を遂げることがある反面、政情不安や政治腐敗、独裁者の失政などによってその国の経済そのものがダメダメになってしまうことも多い。それに新興国株のファンドは総じて運用コスト(運用会社に支払う報酬など)が高く、あまり投資する気になりません。
国内債券や外国債券は値動きが安定している反面、株に比べると成長力が低くて正直物足りません。
それに比べると、米国株は世界恐慌の時代から大暴落が起きても起きても必ず回復し、過去最高の株価を更新し続けてきました。そう考えれば、今後も長期的な成長が期待できるのは、米国株、あるいは、米国株を主力とした先進国株や全世界株に投資するファンドだと考えられます。
細かい話をすれば、米国株・先進国株・全世界株の過去の実績を比べると、やはり米国株の成長力が抜きんでています。
ただ、「今後もずっと米国が最強だ」と考えて米国株ファンドに投資するべきか、あるいは「このさき米国以外の国が成長しても恩恵を受けられるように」と考えて先進国株ファンドや全世界株ファンドに投資するべきかという問題は、専門家でも意見が分かれるところ。よって、このあたりは個人の好みで決めるしかないのが現実です。
また、米国株ファンドにしても、「S&P500」という米国の主要企業500社の株に分散投資するファンドがいいか、中小企業も含めた全米の数千社に分散投資するファンドがいいかという問題がありますが、これも意見は様々。これも好みで決めるしかないでしょう。
というわけで、①の基準に関しては、米国株or先進国株or全世界株に広く分散投資するインデックスファンドであればOK、というのが僕の結論です。
信託報酬は原則0.1%未満
次に②の運用コストについて。
多くの株に広く薄く分散投資できる投資信託は、リスクを抑えたい投資家にとってとても便利な投資商品ですが、ひとつ欠点があります。それは僕たち投資家が運用会社や販売会社に手数料を払わなければいけないということです。
手数料は大雑把にいって2種類。1つはファンドを買ったり売ったりするときにかかる売買手数料、もう1つはファンドを保有している間ずっと取られ続ける信託報酬です。
このうち、売買手数料(※買うときにかかるものを「買付手数料」「購入時手数料」、売るときにかかるものを「信託財産留保額」と呼ぶ。)は現在、多くのファンドで無料化されています。だから、売買手数料を取るようなファンドを見かけたら「時代の流れに逆行する商品」だと思って相手にしない方がいいでしょう。当然、僕も投資対象から除外しています。
一方、信託報酬はファンドの運用コストなので基本的にゼロにはなりません。
ただ、こちらも安い方がいいのは当たり前。
ありがたいことに、インデックスファンド業界では近年、熾烈な信託報酬引き下げ競争が進んでいます。投資家としては是非この流れに乗っかって業界最安水準の低コストファンドを選びたいところです。
こう書くと、「そんなに低コストのファンドを選んで大丈夫なの?」と心配する人もいるでしょう。
答えは「大丈夫」です。
そもそも信託報酬というのは運用会社や販売会社などの取り分です。そして、その中心は、ファンドを運用するプロ(投資家から集めた資金を使って株を売ったり買ったりする人々)に支払う報酬です。
しかし、インデックスファンドの場合、そのプロの人々がいちいち頭をひねって投資すべき株を吟味しているわけではありません。S&P500のような目標とする株価指数(※これをベンチマークと呼びます)と、そのファンドの値動きが連動するよう、コンピューターで自動的に株を売買しているだけです。
だから基本的に、同じ株価指数を目標にしているファンドであれば同じような値動きをします。となると、ファンド間の成績の良し悪しを分けるのは、プロの手腕というより、「運用コストが高いか安いか」、すなわち「業者側の取り分が大きいか小さいか」ということになります。従って、信託報酬は安ければ安いほどいいのです。
(※もちろん、運用会社の能力があまりにも低いと、ファンドの値動きがベンチマークから大きくかけ離れてしまうといった事態が生じる可能性もあります。それが心配な方は各ファンドの過去の運用実績に注目しましょう。それを手軽に見比べる方法を後で紹介します。ただ、投資信託の世界でより警戒すべきは、信託報酬が異常に高いアクティブファンドの存在です。こういう「ぼったくりファンド」を買わないことが、初心者にとっては何より大切です。)
さて、以上のような業界の事情を踏まえたうえで現在の信託報酬相場を見渡してみると、おおむね年間0.1%未満なら「安い」と評価していいと思います。
純資産総額は1000億円以上
最後に③の「規模の大きさ」について。
これは、ある程度たくさんの資金が集まっている人気ファンドの方が、資金の少ない不人気ファンドよりも安心してお金を託せるということです。
例えば、あるファンドを保有する投資家たちが「もうこのファンドはいらないや」と言って次々と売却してしまうと、ファンドの規模を示す純資産総額はどんどん小さくなってゆきます。あまりに小さくなってしまうと、運用会社が「これじゃまともな運用ができない!」と白旗を上げ、運用が中止されてしまうことがあります。(※その場合、ファンドを保有する投資家には相応のお金が払い戻されます。)
なので、長期で安定的に運用したいなら、ある程度の運用期間があって純資産総額が積みあがっているファンドを選んだ方がいい。
また、ファンドの規模が大きい方が運用コストも下がりやすいとも言われています。
では、具体的に純資産総額がいくらあればいいのか?
いろいろなサイトで調べてみると、30億円以上が望ましいとか、100億円以上なら大丈夫とか、様々な意見があるようです。
ただ、ある程度の運用期間と実績があるインデックスファンドであれば、それ相応の人気が出て資金がどんどん集まっているはずなので、僕はもっとハードルを引きあげて1000億円以上とします。まあ、これだけあればちょっとやそっとのことではビクともしないでしょう。
(※念のためですが、「規模の大きいファンド=良いファンド」ではありません。世の中には純資産総額が1000億円を超える「ぼったくりファンド」がゴロゴロあります。手数料の高いファンドは運用会社や販売会社にうま味があるので、金融機関の営業マンが顧客へ盛んに勧めるという事情があるからでしょう。)
それから、純資産総額が単に大きいだけでなく、きれいな右肩上がりを描いて増え続けているかどうかも、将来性を見極めるためにチェックすべきポイントです。
条件を満たすファンドは8本だけ
というわけで、①②③の基準を僕なりにまとめると、
米国株or先進国株or全世界株に広く分散投資するインデックスファンドであり、信託報酬が0.1%未満の安さで、純資産総額が1000億円以上あり、なおかつ純資産総額が順調に伸び続けているものを選ぶ
ということになります。
そして、今の日本で販売されている数多の投資信託の中から、この条件を満たすファンドを探すと、さきほど紹介した8本に絞られるということです。
改めて一覧表を掲げておきましょう。参考までに各ファンドの信託報酬(2024年1月現在)も添えておきます。
では、この8本のファンドの中からどれを選べばいいのかというと、これは正直言って、はっきりした正解がありません。ここから先は個々人の好みで決めればいいと思います。
極めたい人は実質コストにも注目
ここで一つ補足しておくと、信託報酬を比較する際に意識するのは、せいぜい少数第2位あたり(0.01%レベル)までで十分です。それより下の単位まで精密に比較してもあまり意味はありません。
なぜなら、どのファンドでも、公式に掲げられている信託報酬のほかに細々とした隠れコストが発生するため、それらを合計した実際の運用コスト(実質コスト)は信託報酬より少し高くなる傾向があるからです。
そして、その誤差の幅はファンドによって、時期によって違ってくる。その結果、信託報酬が拮抗しているファンドの間では「信託報酬を比較したらAよりBの方が安いのに、実質コストを比較したらBよりAの方が安かった」という逆転現象が往々にして起こります。
だから、運用コストに極限までこだわるのであれば、信託報酬のより細かい数字を比べるより、各ファンドの実質コストに目を向けた方が有意義です。
ただ、実質コストはネット証券のサイトでパッと一覧したりはできません。各ファンドの実質コストを把握しようと思えば、運用会社が定期的に発行する報告書に目を通すといった面倒くさい作業が必要になります。(※業界のルール変更によって、こうした現状が近いうちに改善される可能性はあります。)
では、どうするか?
僕の答えは「信頼できる投資信託ウオッチャーのブログを見る」です。
ありがたいことに、世の中には、各インデックスファンドの運用成績を継続的に観察し、無料で情報発信してくれる方々がいます。
例えば、NightWalkerさんが運営するこちらのブログでは、毎月、同じジャンルに投資する複数のインデックスファンドの運用成績を比較し、一覧表にして発表しています。ここでいう運用成績とは、過去1年とか過去3年とかの間に、そのファンドがどれだけのリターンを生み出したかという数値です。
ファンドの実質コストが高ければ当然、運用成績にマイナスの影響を及ぼすので、この一覧表を見れば、どのファンドが最もコストを抑えて上手に運用されているかが大体わかります。細かい数字にこだわる人にとっては、大いに参考になるでしょう。
逆に、そこまで細かい数字が気にならないという人は、上記8本の中から適当に選べばOKです。正直、ここまで絞ってしまえば、あとはサイコロで決めても問題ないレベルだと僕は思っています。
(※とはいえ、実質コストの比較に関心を持つことは、各運用会社に健全な競争を促すという意味で非常に意義深いことだと思います。)
それでも決められない人は…
さて、以上でインデックスファンの選び方に関する僕の説明はおしまいです。
ただ、読者のみなさんの中には「この8本の中から適当に選べと言われても、やっぱり迷ってしまう」という人もいるでしょう。
そういう方へ参考までにお伝えしておくと、資産運用入門書のベストセラー「ほったらかし投資術」の著者である経済評論家の故・山崎元さんは、初心者がリスク資産(値動きする資産)に投資するならeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)1本でOK、という趣旨のことを書いています。
「どうしても自分で決められない」という方は、このアドバイスに従えばいいんじゃないでしょうか。
参考までに、ここに書籍のアフィリエイト広告を貼っておきます。
ちなみに、NightWalkerさんのブログでも、この「オール・カントリー」(通称:オルカン)はいつも高評価を得ています。
余談ながら、僕自身が投資しているのは「オルカン」ではありません。同じeMAXIS Slim全世界株式の「除く日本」の方です。
「オルカン」が、一定以上の経済力のある世界のほぼ全ての国の株に投資しているのに対し、「除く日本」はその名の通り日本株を投資対象から外しています。
僕が「除く日本」を選ぶ理由は、僕自身が日本の個別株にも少々投資しているので、「オルカン」だったら資産全体で日本株の比率が高くなりすぎてしまうんじゃないか、という思いがあるからです。
それから、もう一つ理由を付け加えると、僕自身が日本経済の将来にあまりいい展望を持っていないということがあります。
これは恐らく、僕が日本企業に長年勤めてきたせいだと思うのですが、「日本の会社って本当に前例主義や精神主義が蔓延していて不合理なことばかりやってるなあ。この文化はちょっとやそっとじゃ変わりそうにないから、これから先もどんどん世界に取り残されていくんじゃないだろうか」という現役時代の印象がいまだに拭いきれません。
だからどうしても「投資先は海外中心にしたい」という意識が働くわけです。
もっとも、僕が働いていたのは、日本企業の中でも最も旧態依然とした新聞業界だったので、他業種ならもっと違う感想を持っていたかもしれません。また、僕には海外企業に勤めた経験がないので、単に「隣の芝は青い」というだけの話なのかもしれません。
というわけで、僕が「除く日本」を選んでいるのも、結局はごくごく個人的な好みによる判断なわけです。
以上、参考になりましたでしょうか? 投資初心者のみなさん、是非こんな感じでインデックスファンドを選んでみてください。
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