百田新党(日本保守党)は旋風を起こすのか!?

2023/09/18

時事ニュース

 今回はガラにもなく政治の話をしてみようと思います。

つい先日、Yahoo!ニュースでこんな記事を見つけました。

圧巻の“自民超え” 日本保守党のXフォロワー数、国内政党で1位に〉(9月16日、夕刊フジ)

日本保守党? そんな政党あったっけ?

不思議に思って記事を読んでみたら、日本保守党というのは、ネット右翼(ネトウヨ)の間で絶大な人気を誇る作家の百田尚樹氏が、右派ジャーナリストの有本香氏と一緒に立ち上げた「百田新党」のことだそうです。

(※正確に言えば、現時点では公職選挙法の政党要件を満たしていないので政治団体ということになります。)




夕刊フジによると、彼らが9月1日にX(旧Twitter)に新党のアカウントを開設したところ、ものすごい勢いでフォロワー数が伸び続け、15日夜には自民党のアカウント(フォロワー数25万人余り)を抜き去ってしまったとのこと。

その前段階として立憲・共産・維新などもことごとくゴボウ抜きしているわけだから、確かに驚くべき人気ぶりです。

Yahoo!ニュースのコメント欄をのぞいてみると、「希望の光です」「期待しかない」「間違いなく私はここに入れる」といった礼賛の嵐。

SNS上にも右派層からの待望論が渦巻いていて、福井県立大名誉教授の島田洋一氏などは雑誌のネット世論調査をもとに「細かい話抜きで言えば、衆議院で360議席(定数465)、参議院で190議席(定数248)取る計算になる」と、目を疑うような数字を挙げて期待をつづっています。

さらには、百田新党誕生のニュースをテレビ局が報じないことに憤り、「日本のマスコミは腐ってるからダメだ!」とSNSで怒りをぶちまける支持者まで出てきました。いやはや、すさまじい熱気です。

(※かつて新聞社に身を置いていた立場から言うと、ひとつの政治団体がSNS上で人気を集めたからといって直ちにニュースになるわけではありません。)

では、この百田新党、実際のところ政界に旋風を巻き起こす存在になるのでしょうか?

もっと具体的に言うと、かつて百田氏と蜜月関係にあった自民党から支持層を奪い取り、今後の国政選挙で大量の議席を獲得するのでしょうか?

そのあたりを考察してみたいと思います。


「自民より右」の政党がたどった道

結論から言うと、その可能性はかなり低いと僕は予想しています。

というのは、自民党のパワーの源泉は、業界や地域への利益誘導によってきずきあげた強固な組織票であって、「愛国」とか「日本の誇り」とかいったワードに反応して集まってくる右派層の票は、党にとってむしろ2軍3軍的な存在だからです。

そもそも、安倍政権時代から特に多用されるようになったこれらのワードは、自民党を中心とした利権サークルの外側にいる人々(例えば都会の若年層や低所得者層など)へ、広く浅く支持を広げるためのPR広告みたいなものです。

どんな国でも国力が衰えて国際的地位が低下してくると、自国を過剰に賛美したり、隣国への敵対心を煽ったりする愛国イデオロギーに感化される人は増える傾向にあります。だから、安倍政権が進めたこの戦術は、善悪は別として極めて時流にマッチしたものだったと言えるでしょう。

しかし、先ほども言った通り、自民党の本領はそこではありません。

この党の土台を支えているのは今も昔も、経団連・医師会・建設業協会・農協・漁協といった業界団体や、「〇〇高速道路建設促進期成同盟会」みたいな地方の利益誘導団体。こうした団体の傘下にぶらさがっている膨大な数の業者たちが、選挙のたびに集票マシンとなってフル稼働するわけです。

当たり前のことですが、この人たちを動かしているのはイデオロギーではなく現世利益です。「自民党が負ければ自分たちの既得権が脅かされかねない」「自民党が勝っても貢献度が低いと判断されたら冷遇されかねない」と恐れているから一生懸命動き回ります。




こうしてガチガチに固められた組織票に、個々の候補者のキャラクターや経歴にほれこんで応援する人々の票、なんとなく変化を嫌い安定を望む人々の票、そして、愛国イデオロギーに引き寄せられた右派層(ネトウヨを含む)の票などがドサッと上積みされることによって、自民党は盤石の強さを誇ってきたわけです。

これでおわかりでしょう。

百田新党のXフォロワー数が自民党を抜いたという事実が意味するのは、せいぜい「自民党の巨大な票田から、その一部であるネトウヨ票を奪っていきそうだ」という話です。

振り返ってみれば、過去、こうした構図を十分理解していない右派政治家たちが「自民党よりさらに右寄り」であることをウリにした新党を立ち上げ、鳴かず飛ばずのまま消滅していった例は枚挙にいとまがありません。

たちあがれ日本、太陽の党、次世代の党、日本のこころ……みんなこのパターンでした。




このことからわかる通り、少なくとも今の日本では「利益誘導のできない右派政党」は、強大な自民党の前でことごとく霞んでしまうのです。

身近な話で例えると、いくら勇ましいことばかり言ってても、いい店に連れて行ってくれない男はモテない、といったところでしょうか。

(※こう書くと「維新の成功例があるじゃないか」という指摘を受けるかもしれませんが、維新の場合は「自民党から局地的に利権をぶんどったケース」だと僕は理解しています。そもそも、維新は「自民党より右寄り」ということを党の看板にしているわけではありません。)


百田新党が生き残るとすれば

というわけで僕は、百田氏が党首として国政選挙を1回か2回くらい戦った後、「マスコミの偏向報道のせいで勝てなかった」「日本の新聞・テレビは潰さないといかん!」的な捨てゼリフを残して党運営を放り出すのではないかと想像しています。

ただ、そうは言っても、百田氏はこれまで数多くのベストセラー小説を世に送り出してきたエンタメ界のビッグネーム。また、今の日本におけるネトウヨの潜在的な人口規模は未知数であり、年々増え続けているのではないかという見方もあります。

もしかしたら、自民党を脅かすレベルまでいかなくても、旧NHK党みたいな「お騒がせミニ政党」として存在感を発揮することはあるかもしれません。

例えば、ネトウヨに人気の論客やタレントを国政選挙で多数擁立して話題を集めることに成功すれば、選挙区で勝てなくても比例代表で議席を獲得することは不可能じゃないでしょう。

そうやって国会に足場を築き、憲法改正や防衛費増額などの特定分野で自民党と共闘しつつ、ときおり党首の過激発言で国民の注目を集める。言ってみれば、維新や国民民主が今やっているような「与党の補完勢力」としての立ち位置で存在感をアピールする作戦です。

もし、百田氏が現段階でそこまで計算していたらすごいと思いますが、実際のところはどうなんでしょう。

いまのところ「新党を立ち上げた理由は、安倍元総理亡き後、保守政党でなくなってしまった自民党への怒りだ」と強調している百田氏ですが、実際に選挙を経験して「躍進は難しい」と判断したら、案外ケロリとした顔で自民党と手を組んでしまいそうな気もします。

いずれにせよ、百田新党の動向には今後も注目してゆこうと思います。どんな面々が新党に参加するのか気になるし、新党の得票から日本のネトウヨ人口を推計することができるかもしれないし。かつて新聞社で選挙取材に携わった身としては、いろんな意味で興味深い観察対象だと感じています。

おすすめ記事:自民党 vs 百田新党 もし戦わば




自分の写真
コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

過去記事(時系列)

このブログを検索

ブログランキング・にほんブログ村へ

ご意見ご感想 お待ちしています

名前

メール *

メッセージ *

QooQ