FIREしたら親孝行できる~実家の父を筋トレデビューさせた話

2024/01/25

リタイア生活

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FIREを語るときに意外と見落とされがちなことですが、「親孝行できる」というのは早期リタイアの大きなメリットです。

実家から遠く離れた場所で子育てしながら働いている30~40代くらいのサラリーマンの方なら多分わかってもらえると思いますが、仕事に追われる日々の中で親のことを考える機会って正直あまりありません。

サラリーマンが家族関係で頭を悩ますことと言えば、ほとんどは「どうすれば、もっと我が子と過ごす時間を確保できるだろうか」という問題でしょう。

実際、雑誌なんかでFIRE達成者のインタビューを読むと、早期リタイアの理由を問われて「子供と向き合う時間を増やしたかった」と答える人が多い。

僕の場合はそれが理由ではないのですが、それでも新聞記者だったころは「ああ、この仕事はなんでこんなに休みが取れないんだ。もっと子供と遊びたいのに!」とよくボヤいていました。

両親には大変申し訳ない話ですが、働きながら「もっと親孝行したいのに!」とボヤいたことは多分一度もありません。それくらい、僕は親孝行と縁のない人間でした。




ところが、45歳で実際に仕事を辞めてみて、僕の考えはだいぶ変わりました。

これは以前、〈早期退職3周年の実感〉という記事にも書いたことですが、子供の多くは中学生以上になるとあまり親と遊びたがらなくなります。この年齢になると放課後は部活や塾に忙しく、貴重な自由時間は友達と遊びに出かけるようになるからです。

そして、僕が早期退職した時点で、うちの子供たちは小5~中2という年齢に達していました。

そう。僕はFIREして膨大な時間を手に入れたけど、皮肉なことに「お父さんと遊びたい」という子供側の需要は、すでに下降線を描き始めていたのです。




ここに至って初めて、僕の頭の中に「親孝行」という文字が浮かびました。今振り返ると、恐らく次のような思考経路をたどったのではないかと思います。


僕は多くの時間を手に入れたけど、子供は僕と遊びたがらない

   ↓

妻もなんとなく子供と同じような感じ

   ↓

じゃあ、僕と一緒にいることを最も喜んでくれる人間って誰だろう?

   ↓

それって実家の両親じゃないか!


とまあ、こんな感じです。

どうやら人間とは、目の前の我が子から相手にされなくなったとき、初めて故郷の我が親のことを考える生き物のようです。

というわけで、めちゃくちゃ長い前振りになってしまいましたが、今回の本題である〈実家の父を筋トレデビューさせた話〉を始めます。


すっかり体力の衰えた76歳の父

FIRE後の僕が親孝行の手段としてまず考えたのは、四国に住む両親を誘ってあちこち旅行することです。しかし、この方法が成功したのは母(75)だけでした。

瀬戸内海の島で生まれ育った母は、自動車免許を持っておらず、自分1人で電車やバスに乗るのが苦手な人なので、自ら遠出することはほぼありません。そのせいもあって、僕が旅行に誘うと喜んでのってきました。

お陰で4年前にFIREして以降、北海道や長野などあちこちを一緒に旅することができました。今年もまたどこか新しい場所へ出かけようと計画しているところです。

僕が会社を辞めるのがあと10年遅かったら、こういう形の親孝行はできなかっただろうなと、しみじみ感じています。


一方、父(76)は旅行に誘っても全然のってきません。理由は「体調に自信がないから」です。

現役時代の父は、鉢植え植物を栽培する農家でした。肉体労働に従事しているだけあって僕が子供のころは筋肉隆々としていましたが、健康に無頓着な性格がたたって、後期高齢者となった今は見る影もなく体力が落ち、背中も丸まってしまいました。




今でも畑で野菜を作ってはいるものの、とにかく疲れやすく、よく体の不調に悩まされています。特に去年あたりからは、床から立ち上がるのに「う~ん」とうなり声をあげないといけないくらい、足腰が弱ってきています。

去年の秋、実家に帰省してその様子を目の当たりにした僕は「こりゃあ、旅行どころか、このまま要介護になってしまうんじゃないか」と感じました。

で、なんとかしなければと考えてたどり着いた答えが、「父をトレーニングジムに連れて行って筋トレを教えよう」というものです。


「筋肉礼賛動画」でヤル気を引き出す

筋トレが寝たきり予防に役立つということは医学的に証明されています。「幸せな老後を迎えたければ貯金より貯筋に励め」と説く医師もいるくらいです。

何より、筋トレは僕の趣味の一つ。父さえやる気になってくれれば、つきっきりで正しい筋トレの方法を教えてあげることもできます。

まさに今、自分がやるべき親孝行はこれだろう、と思いました。

問題は、何事もおっくうに感じてしまいがちな老人を、どうやってその気にさせるかです。

案の定、僕が普通に誘っても、当初は「面倒くさい」という反応しか返ってきませんでした。

ここで頼ったのがYouTubeです。

うちの父は昔から、テレビCMに影響されやすいタイプの人間でした。例えば、毛先がギザギザの一風変わった歯ブラシのCMを見たら、すぐにその歯ブラシを買って使い始めるといった感じで。

そこで僕は、筋トレの効果をテレビCMのように言葉巧みに説いてくれる動画をYouTubeで探し出し、リビングでくつろいでいる父の隣でノートパソコンからさりげなく流し続けるという作戦を仕掛けました。

ちなみにその動画とは、「60すぎたら本気で筋トレ!」(船瀬俊介)という書籍の内容を、教養系ユーチューバーが面白おかしく要約した約40分間の作品です。

動画はこちら

ちなみに、元になった本はこちらです。


筋肉があなたの人生を変える!

カネより筋肉を貯めろ!

筋肉は老後最強の資産である!

……

パソコンから流れてくるこんなフレーズを繰り返し聞いていると、否が応でも心が高ぶってきます。

その効果は確かにありました。

2日間ほど動画を流し続けた後、僕が改めて父を筋トレに誘うと、「じゃあ、いってやるか」と渋々ながら応じたのです。(我が父ながらチョロすぎる…)


老体に秘められた驚異のパワー

父と一緒に地元のトレーニングジムを訪れた僕は、とにかく「父を上機嫌にさせること」に全力を注ぎました。

どのマシンを使う場合も、まずは明らかに軽すぎると思われる負荷に設定して父にやらせてみる。

すると父は「こんなもん、軽すぎる。もっと重くしてくれ」と言う。

そこで僕は「ええ‼ 本当に大丈夫? これ結構重いよ」と大袈裟に驚いてみせる。

すると父は「ははは、わしは毎日、畑仕事やっとるからな」と得意になる……。

この繰り返し。

僕が見たところ、父は足腰は弱っているものの、腕の筋力はそれなりに残っていました。この分なら、日常的にトレーニングを続けることで、そのうち足腰の強さもある程度取り戻せるのではないか……。そんな期待が芽生えてきました。

しかし問題は、僕が実家を去った後、どうやって父にジム通いを継続させるかです。思案していると、思わぬサプライズがそれを解決してくれました。

トレーニング終了後、ジムに置かれていた握力計に興味を持った父が、それを握ってみたところ、なんと50.3kgという記録をたたき出したのです。

「おお、すげえ!」

僕はお世辞抜きで感嘆の声をあげていました。

とても後期高齢者とは思えない数値。ジムに掲示されている年代別平均値と見比べると、父の握力は20代男性の平均値さえ凌駕していました。

さすがは長年の肉体労働で鍛えた体。足腰や体幹は衰えても、部分的にはまだまだ爆発的なパワーを秘めているということなんでしょうか……。


筋トレ習慣の定着に成功

結果的に、このサプライズが父のモチベーションを一気に高めてくれたようです。

それ以降、父は素直に筋トレの誘いにのってくるようになりました。僕はこのときの帰省で1カ月以上実家に滞在し、父と一緒に計11回ジムに通ったのですが、その後、僕が都会の自宅に戻ったあとも父はしっかりジム通いを続けているようです。

あるとき、僕が「お父さんの様子はどう?」と実家に問い合わせると、電話に出た母は「まだ続いてるよ。この前は『握力で51キロが出た』と自慢してた」と笑っていました。

もちろん、筋トレを続けているからといって、父が飛躍的に元気になったわけではなく、今も相変わらず背中は丸く、足腰は弱いままです。

それでも、健康に無頓着な父に筋トレ習慣を植え付けることができたというだけで、我ながら素晴らしい成果。これもFIREで膨大な自由時間を手に入れたからこその快挙でしょう。

とりあえず、両親そろって旅行に連れ出すという最終目標に向かって一歩前進したのではないか。そんな手応えを感じています。


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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