不動産保有で社会保障負担が増える!? 戦慄の議論が進行中

2024/05/14

税金

このところ、僕たち国民の負担増を予想させる暗いニュースが相次いでいます。



昨年12
月には、個人が保有する金融資産に応じて医療・介護保険の負担を増やす案を政府が検討しているというニュースが流れ、SNSなどで「これって事実上の金融資産課税じゃないか!」「FIRE潰しだ!」と騒ぎになりました。(詳しくはこちら

また今年4月には、株式配当などの金融所得を、確定申告するしないにかかわらず社会保険料に反映させる案を政府が検討し始めたというニュースが流れ、これもSNS上で議論を巻き起こしました。

どうやら今の自民党政権は「増税内閣」という批判をかわすために、医療保険や介護保険を主なターゲットにして国民の負担アップを狙っているらしいな……。そんな思いを強めていたところ、ここでさらなる情報が飛び込んできました。

今度はなんと、個人が保有する不動産(土地・建物)に応じて、社会保障負担を増やしてはどうか――――という案が政府内で議論されているという話です。

持ち家の方や不動産投資をしている方にとっては、かなり衝撃的な内容でしょう。というわけで、今回はこの情報について考察してみることにします。


政府の有識者会議で語られた負担アップ案

まず、この情報の出所を示しておきましょう。

それは昨年1130日に開催された「全世代型社会保障構築会議」という名前の政府の有識者会議です。その議事録が今年1月になって内閣官房の公式サイト公開されたのですが、その中に会議メンバーの驚くべき発言が記録されていました。

2040年を見すえた医療・介護の負担の仕組みをどうするかという文脈で出てきた言葉です。では、その発言をご覧ください。(※カッコ内は穴切による補足です)


(検討が必要だと思うのは)不動産の勘案。金融資産の勘案という話は既に書かれているわけですけれども、資産を持っているというのは金融資産だけではないと。不動産もあるということで、今までは介護保険でも金融資産の勘案という話が議論に上ったときに、不動産は勘案できないのかという話も初期の頃はあって、けれども、残念ながらその当時の仕組みでは固定資産税の台帳は確かに各市町村にあるけれども、他の市町村に保有している不動産というのは当然ながら把握できないということなので、自分が住んでいる市町村の不動産しか勘案しないというのではアンバランスなのではないかということで、不動産の勘案という話が立ち消えになった。私の記憶では、そういう議論の経緯があったと承知しておりまして、そういう意味では、2040年を見据えるということであれば、不動産を勘案するということができるのではないか。特に今、進められている不動産IDの活用ということが官民協調して行われるということがありますから、それでデジタル的にも勘案することができるのではないかと思います。 

(第16回全世代型社会保障構築会議の議事録P21より)


いかがでしょう。

ダラダラとした話し言葉なので意味がわかりにくいですが、要するに、この有識者(大学教授)は、金融資産の保有状況に応じて負担を増やすだけではなく、現物資産である不動産の保有状況も負担に反映させるべきだと持論を展開しているわけです。

ちなみに、僕もあまり詳しくないのですが、介護保険の世界では以前から、一部の給付を受けるためには「保有する金融資産が一定額以下でなければならない」という条件が設けられていました。つまり、たとえ収入が少なくても、お金をたくさん貯めている人は介護サービスを受けたときの自己負担が増える仕組みになっているわけです。

その事実と今回のこの発言を考え合わせると、およそ次のような話が見えてきます。

すなわち、かつて介護保険の給付に金融資産の保有状況を反映させる制度を導入した際にも、不動産も条件に含めるべきだという議論はあった。しかし当時は、その人が住んでいる自治体以外の場所に不動産を保有している場合、行政側がそれを把握することが難しいという理由でこの案は見送られた。

しかし、今なら全国的に不動産情報のデジタル化が進められているんだから、やがて国民1人1人の保有不動産を簡単に集計できるようになるはず。それなら、2040年に向けた制度改革として、不動産の保有状況を社会保障負担に反映させられるじゃないか――――というわけです。

いや~、恐るべき提案です。

僕の記憶では、昨年12月に「金融資産に応じた負担アップ案」がニュースになったとき、SNS上には「これは株を売って家を買えという政府のメッセージじゃないか?」「持ち家が負担増につながるとなったら高齢者たちが大反発するから、政府は金融資産に的を絞ってきたのでは?」といった憶測が飛び交ったように思います。

また、そうした声を見ながら賃貸派の僕は「不動産はセーフ、金融資産はアウトというのは何だか不公平だな」と思った記憶があります。

でも、現実はさらに深刻でした。

金融資産であれ不動産であれ、老後に備えてせっせと資産形成した人は、いずれ政府による無差別爆撃を受けることになりそうです。


実現可能性はどのくらいか

ちなみに、僕がこの有識者の発言を知ったきっかけは、三本勝己さんという税理士の方が513日に配信したYouTube動画でした。その内容に驚いて内閣官房の公式サイトにあった議事録をのぞき、発言が事実であることを確認した次第です。



ただ、ここで1つ
押さえておきたいポイントは、この「不動産に応じた負担アップ案」は今のところ有識者会議で議論になったという段階であって、まだ正式な省庁案にはなっていないということです。

その意味では、「金融資産や金融所得に応じた負担アップ案」に比べると、まだまだ実現可能性は高くないと思われます。

1つの政策が実現するまでの一般的なロードマップを、僕なりの拙い理解でざっくり解説してみると、


① 財務省や厚生労働省といった役所が、都合の良い発言をしてくれそうな学者や経済人たちを集めて有識者会議を開き、制度改革などを議論させる。

そこで出てきた様々な意見の中から、役所の目指す方向と一致する意見を官僚たちがが拾いあげ、財務省案や厚労省案を作って自民党に示す。(※このあたりからメディアが報道し始める)

これらの省庁案を自民党の族議員たちがチェックし、自分たちの利害に反していないことを確認したうえで自民党案をまとめる。

④さらにそれを公明党の議員らがチェックし、支持母体である創価学会の理解が得られそうかどうかを吟味したうえで自民党と合意する。

こうした手順を踏んで政府・与党案が出来上がると、後は形だけの国会審議を経て改正案が可決・成立する。


……といった感じでしょうか。

このロードマップに照らし合わせてみると、「金融資産や金融所得に応じた負担アップ案」がすでに②の段階まで進んでいるのに対し、今回の「不動産に応じた負担アップ案」はまだ①の段階です。

なので、この意見が今後②の段階へ進むかどうか、すなわち、厚労省案に盛り込まれて自民党に示されるかどうかは定かではありません。

しかし、自民党政権のこれまでの増税路線を考えると、やがてこの案も現実味を帯びてくるんじゃないかという気がしています。

いや~、それにしてもこういうのを見ていると、この国のお偉いさんたちはなぜ、財政難を克服する手段として無駄遣いの撲滅に取り組むのではなく、国民負担を引き上げることばかり考えるのだろうと改めて疑問が湧いてきます。

恐らくこれは「増税メガネ」と揶揄される岸田総理のパーソナリティーといったレベルの話ではなく、自民党政権が続く限り永遠に変わらない「無駄遣いと増税の無限ループ」なんだろうと思わざるをえません。

とりあえず、この件にはこれからも注目し、新たな動きがあればまた報告します。

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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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