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前回の記事に引き続き、5月下旬の九州旅行の報告です。後編の今回は、薩摩半島の海岸を歩きながら将来の移住先候補地を探した顛末をお伝えします。
(※このブログに掲載している写真はどれもクリックするとくっきり見えます)
5月26日(日)鹿児島
すでに書いた通り、僕はこの日、JR熊本駅で母や兄と別れ、1人で鹿児島県へやってきました。
この九州旅行、これまでは母や兄と一緒だったので、宿泊先は常にある程度小綺麗な個室の宿を選んできました。
しかし、ここから先は完全に僕の価値観だけで行動できる1人旅。となると、もう高いお金を払って個室に泊まる必要はありません。
というわけで、この日の宿泊先はこちらです。
JR鹿児島中央駅のすぐ近くの路地裏にあるゲストハウス「リトルアジア鹿児島」。
1泊なんと1800円!
高千穂峡の30分貸しボートの半額以下の値段です。
リトルアジア鹿児島
恐る恐る中に入ると、そこはいきなり洗濯場。宿泊客と思しき外国人女性が衣類を物干しにかけていました。
おお、この素晴らしき生活感!
学生時代の貧乏旅行の記憶が鮮やかに蘇ってきます。
廊下の奥にある受付でチェックインを済ませた後、案内された寝室はこちら。
室内に2段ベッドがぎっしり詰まったドミトリー。何から何まで期待通りのテイストです。
せっかくだから、宿の設備を詳しく紹介しておきましょう。
まず、寝室は男女別々になっており、各ベッドにはコンセントがあるので、充電器を持っていれば枕元でスマホを充電することも可能。シャワーは内側からカギをかけられる個室タイプになっていて、無料で温水が使えます。
そして何より嬉しいのが、洗濯機と洗剤を無料で使えること。僕は2日分の下着と靴下をここでキレイにすることができました。なお、乾燥機だけは300円のコイン式ですが、僕は物干しを利用したので出費はありませんでした。
さらにありがたいことに、宿には共有のキッチンとリビングがあります。宿泊者は外食するもよし、近くのスーパーやコンビニで食材を買ってきて調理するもよし。これはなかなか便利です。
僕が共有スペースのちゃぶ台でバナナを食べていると、相席した年配の女性が「お兄さん、これどうぞ」とトマトを2個譲ってくれました。
この女性、かなりの1人旅マニアらしく、1カ月ほど前に関東の自宅を出発し、こういう安宿に泊まりながら西へ西へと移動して鹿児島までやってきたとのこと。
「少し前までは東欧とかすごく安く旅行できてたのに、今は全然ダメ。だから最近は国内旅行ばかりしてるのよ」とボヤいていました。世の中には面白い方がいるものです。
おっと、この宿のことばかり書いていたらキリがないので、話を先へ進めましょう。
5月27日(月)薩摩半島
一夜明けると朝から生憎の雨。天気予報では遥か南の海上で台風が発生したとの情報もあり、憂鬱な気分です。
しかし、いつまでも宿でゆっくりしているわけにはいきません。今回の旅には「理想の移住先を探す」という重要なミッションがあります。僕は心を奮い立たせ、レンタカーで南を目指して出発しました。
さて、ここで読者のみなさんに質問です。もし、あなたが今すぐ仕事を辞めて好きな場所へ移住するとしたら、候補地選びで最も重視する条件って何ですか?
災害の少ない土地、冬でも暖かい南国、あるいは夏でも涼しい高原、公共交通機関や医療施設が整った大都市、刺激の多い東京のど真ん中、両親や旧友が住む故郷……などなど人によって様々なこだわりがあることでしょう。
僕の場合、それは生物相の豊かな岩だらけの自然海岸が近くにあることです。もちろん、趣味の魚突きや釣りを思う存分楽しみたいから。
なので当然のことながら、一般人がヤスを使って魚突きをすることが漁業調整規則で禁止されていない都道府県であることは絶対条件です。
さらに付け加えると、大都市から十分離れていて海の汚染が進んでいないこと、気候が温暖で暖流の影響が強く、1年のうち海で泳げる期間が比較的長いこと、僕の好物である魚種がたくさん生息している海域であることも重要。
さらに贅沢を言えば、海岸線が複雑に入り組み、岩礁がたくさん点在している風光明媚な土地であればなお最高です。
こういう視点で日本列島を隅から隅まで眺めまわしたとき、条件に見合った土地がいくつか浮かんでくるのですが、その中でも魅力的な土地の一つが薩摩半島の南端付近なのです。
特に、南九州市頴娃町から枕崎市を経て南さつま市坊津町に至る辺りの海岸線は、ヤフー地図の衛星写真を見ても、こんなふうに入り組んだ荒磯が続いていて、とても良い感じ。
僕はかなり以前から、この辺りの海岸を一度踏査してみたいと思っていました。その日がついに来たわけです。
ところが、冒頭にも書いた通り、この日は無情の悪天候。憧れの海岸にたどりついてみると、こんな有様でした。
無理して磯を歩こうにも、土砂降りの雨と波しぶきのため傘が全く役に立たず、靴も靴下もすぐにびしょ濡れ。とても磯の生き物を観察できるコンディションではありません。そもそも濡れた岩は滑りやすく、転倒の危険すらあります。
仕方なく車の中で天候の回復を待ちましたが、雨足は強まるばかり。
とうとうこの日は磯歩きを断念し、予約していた宿に早めにチェックインすることにしました。それがこちら、枕崎市の「
ゲストハウスMac」です。
僕が利用したドミトリーは1泊3000円。
前日のリトルアジア鹿児島に比べたら幾分高いですが、施設の綺麗さ、快適さは格段にグレードアップ。窓から枕崎港を眺められる立地の良さも好印象です。
もちろん、シャワー室や自炊施設、洗濯機も完備。宿のお兄さんも親切で、とてもコスパの高い宿でした。
夕食は、磯歩きができなかった鬱憤を晴らすべく奮発することに。
枕崎といえばカツオ。というわけで、枕崎港にほど近い「だいとく」というお店で、「枕崎鰹船人めしSP」(大盛り1200円)という名物料理を味わいました。
これはカツオ漁船の船乗りたちが食べていた賄い飯を現代風にアレンジしたもので、生ガツオや鰹節をのせた丼飯に熱々のカツオ出汁を注いで食べるという、カツオ丼とカツオ茶漬をハイブリッドさせたような一品です。
この店には他にも「かつおラーメン」とか「カツオたたき定食」といった魅力的なメニューがたくさんありました。
5月28日(火)薩摩半島
この日の昼前になってようやく雨は上がりましたが、まだ海は荒れています。依然として磯歩きには厳しいコンディションなので、枕崎市郊外にある波静かな漁港で防波堤釣りをしてみることにしました。
こんなこともあろうかとリュックの端っこに忍ばせてきた超小型の釣り竿(左足で押さえている黄色い物)が、ここで役に立つことになります。
(※この超小型竿は本来、泳ぎ釣り専用の竿です。詳しくは
こちらをご覧ください)
いつもなら干潮時に磯にはり付いている小さな一枚貝や巻貝を拾って釣りエサにするところですが、今回は海が荒れているのであきらめて、おとなしく地元のスーパーで198円の中国産アサリの剥き身を買ってエサにしました。(※これなら余っても自分で食べればいいので、もったいなくありません)
波間に糸を垂らして待っていると次々とアタリがありますが、釣れるのは小物ばかり。
これじゃあ夕食のおかずにならないのでリリースします。
たまに大きなアタリもあるのですが、荷物軽量化のため1号ハリスしか持ってきてなかったので、ことごとく糸を切られて逃げられてしまいます。
やはり貧弱な仕掛けで満足な食材をゲットするのは難しい。そうこうするうちに日も暮れてしまったので、僕は自前の食材調達をあきらめ、地元のスーパー「タイヨー枕崎店」の半額セールを狙うことにしました。その成果がこれ。
地元枕崎で水揚げされたカツオの刺身(1パック478円→239円)と、カツオのたたき(1パック255円→127円)。
これをゲストハウスMacに持ち帰り、同じくスーパーで買ったおにぎり、キュウリ、カイワレを添えて九州最後の晩餐としました。
それにしても、なんという鮮やかな赤色でしょう。もちろん味も絶品でした。
5月29日(水)薩摩半島
今回の旅行もいよいよ今日が最終日。皮肉なことに、僕が九州を去る日になって、抜けるような青空が広がりました。
予約している帰りの飛行機の出発時刻から逆算して、午前中だけなら磯歩きを決行することができる。もちろん時間の制約があるので、あっちもこっちも見て回ることはできないが……。
そう考えた僕は、南九州市頴娃町に鎮座する釜蓋神社周辺の海岸に的を絞って磯の観察をすることにしました。こちらがその神社です。
神社の裏手を起点に黒潮洗う荒磯をズンズン歩いてゆくと、遥か東の方角に開聞岳(かいもんだけ)が見えてきました。思わず足を止めて見とれてしまう美しいシルエットです。
そして沖合には薩摩硫黄島の姿がうっすら。(水平線の中央付近です)
ちなみにこの硫黄島は、「平家物語」に登場する鬼界ケ島(鹿ケ谷の陰謀の首謀者である俊寛が流刑になったところ)だと考えられている島です。僕みたいな平家物語ファンは、この島影が見えるだけでテンションが上がってきます。
(※太平洋戦争で日米両軍の激戦地となった硫黄島はまた別の島です、念のため)
さて、僕が歩いている足元の磯はこんな感じ。ここなら思う存分、魚突きや磯釣りが楽しめそうです。
また、所々に適度な砂浜もあります。
う~ん、これは期待通りの素晴らしい海岸線だ。
もっとも、景色だけを鑑賞している場合ではありません。この辺りの磯にはどんな生き物がいるのでしょうか。ざっと写真を並べてみます。
うん、これも思っていた通りの豊かさです。このぶんなら魚もたくさんいることでしょう。
ちなみに、この付近の集落の景観はこんな感じ。
高台の自宅から毎日、大海原や開聞岳を眺められる暮らし。そして気が向いたら、歩いて磯釣りや魚突きに出かけられる暮らし。なんとうらやましい環境でしょう。
あ~、僕もいつかこんなところで暮らしてみたい!
ここは間違いなく、超有力な移住先候補になるぞ!
そんなことを考えながら延々と散策を続けていたら、暑さで頭がクラクラしてきました。気づけば、そろそろ鹿児島空港に向かって出発した方がいい時刻です。
仕方ない。最後に、とある岬の先端付近で見つけたタイドプールを写真に納め、この見事な海岸に別れを告げることにしました。
それにしてもこの開聞岳の雄姿、どれだけ見ても見飽きることがありません。
そういえば今から3年前の夏、当時FIRE2年目だった僕が次男と2人でキャンプに訪れた大隅半島の海岸からも、鹿児島湾越しにこの山を望むことができました。これがそのときの写真です。
いや~、どこから見ても非の打ちどころのない美しさ。まさに南薩のランドマークです。
さて、8日間にわたった九州旅行もそろそろ幕引きです。後半は悪天候に見舞われ、心ゆくまで移住地探しをすることはできませんでしたが、少なくとも南九州市頴娃町付近に素晴らしい自然海岸があることだけはよくわかりました。
すべての日程を終え、薩摩半島から鹿児島空港までレンタカーを運転する途中、開聞岳と双璧をなす鹿児島県のランドマーク・桜島が見えたので、思わず車を止めてパチリ。
この1枚をここに掲げて、今回の旅行記を締めさせていただきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(おしまい)