新聞社からネットメディアへの転職は地獄?

2023/05/31

新聞業界

今回は最近気になったネット記事のことを書きます。

「みんかぶ」という経済系ニュースサイトが530日に配信した〈しがみついた方が幸せ…恐怖!新聞記者のリストラ連鎖に50代元全国紙記者「転職先では腫れ物扱い」「報道記者の全てが否定」〉という記事です。

元新聞記者の僕にとっては背筋が寒くなるような話でした。




50代元全国紙記者の苦悩

ごく大雑把に要約すると、昨今リストラが進む新聞業界からネットメディアへ転職する記者が結構いるけど、うまく適応できるのはせいぜい30代前半まで。 それより上の世代は地獄を味わっている、という話です。

で、ネットメディアに転職した50代の元全国紙記者が登場。彼にとって新しい職場は……

・見出しの付け方が新聞と全く違う

・記事の書き方が新聞と全く違う

・PVを稼げるような企画を出せず、会議で失笑を買ってしまう

・各記事のPVが数字で示されて自分のダメダメさがバレてしまう

……といった悪夢のような世界。

「新聞社にしがみついていた方が幸せだったのか」「 早く年金をもらえる年齢になりたい」と考える毎日だというのです。

さらに、こんな元新聞記者たちを間近で見ているネットメディアの編集者は「一般常識のなさに度肝を抜かれます」 「新聞記者には『今、読者が何を求めているのか』という感覚がありません」「主婦にコタツ記事を数千円で書いてもらった方がPVを取れます」などとケチョンケチョンのコメント。

(※「コタツ記事」というのは、自分の足を使って取材せず、ネット情報などを適当にまとめて書いた手抜き記事のこと。「コタツに入ったまま書ける」という意味でこう呼ばれています。)

要するに、中高年の元新聞記者というのは、頭が固く、世間の関心が読めず、面白い記事が書けず、プライドばかり高い「使えない人々」だというのです。

う~ん、読んでいていたたまれない気持ちになってしまいました。

もし自分が転職していたら…

振り返ってみれば、僕自身も45歳で新聞社を早期退職しましたが、幸いにもある程度の蓄えがあったお陰で、転職ではなく アーリーリタイアという生き方を選択することができました。

もし、そこまでの経済的余裕がなく、まかり間違ってネットメディアに転職していたら、こんなに辛い後半生を送るハメになっていたのだろうか……。

そう考えたらゾッとするとともに、改めて「若い頃から節約に励んでおいて良かった」という気持ちがわいてきます。

もちろん、このネット記事に反論したいこともあります。

僕が働いていた新聞社にも斬新で面白い企画を思いつくタイプの人はいたし、ネットメディアの過剰なPV至上主義が「タイトルだけセンセーショナルで中身の薄いネット記事」を量産している側面もあると思います。

しかし現実問題として、新聞業界の今の凋落ぶりを考えると、やはりこの記事の指摘は深刻に受け止めないといけないでしょう。

なぜ元新聞記者は酷評されるのか

とても耳が痛い話ではありますが、確かに、今の新聞には読者不在の面白くない記事があふれています。「面白くないけど社会的意義がある」というのならまだいいのですが、そんな意義さえ見いだせないような記事がいくらでも目につきます。

例えば、役所が明日発表することを1日早くつかみましたという理由で、あまり画期的でもない新事業を必要以上に大きな扱いで報じる「早打ちネタ」。

例えば、新聞社の主催行事だからという理由で、ニュースとしての価値判断を度外視して例年大きく扱っている「我が社モノ」。

例えば、大事件発生後の数日間、新事実があろうとなかろうと毎日掲載し続ける中身スカスカの続報ーーーーなどです。

はっきり言って、こういう記事は新聞社に蔓延する前例踏襲主義の産物です。個々の記者が自分の意志で書いているというより、組織が記者にノルマとして書かせているのが実態です。

そして、こういうノルマを一生懸命こなしてるうちに、「読者は何を求めているのか」「 どうすれば面白い新聞を作れるのか」といったことをあまり考えなくなってしまう人は結構たくさんいます。


そんな彼らが知恵を絞って考えるのは、せいぜい「どうすれば役所の幹部に食い込めるか」「どうすれば他紙を出し抜けるか」といったことばかり。社内評価の基準がそこに偏重しているからです。

こういう特殊な世界に長年どっぷり浸かっていた人が外の世界へ飛び出した時に「使えない」「面白くない」と酷評されるのは、ある意味必然なのかもしれません。この辺りに問題の本質があるような気がします。

そして残念ながら、僕自身も恐らくそういうタイプの人間です。

ネットメディアや他業種へ転職しなくてすんだ我が身の幸運を噛みしめつつ、これからも節約を忘れず、つつましく生きていこうと改めて心に誓った次第です。


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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