新NISAの成長投資枠で何を買うべきか

2023/06/08

NISA 資産運用

来年(2024年)スタートする新NISAを使って、どんな投資をするのが一番効率的か?

今回はそんなことを考えてみます。

NISAとは金融庁が2014年に始めた少額投資非課税制度のこと。

普通なら株式投資で利益を出すと、その約20%を税金で持っていかれますが、NISA口座を使えば個別株に集中投資して爆益を上げても、高配当株を長期保有して配当金をもらっても、税負担はゼロ。

しかも、来年からは今まで以上の金額を期間無制限で非課税運用できるようになります。

ただ、制度がパワーアップした分、それをうまく使いこなせるかどうかで、投資結果により大きな差がついてしまいます。人によってはうれしくも悩ましい問題でしょう。

そこでこの記事では、僕なりのアプローチで新NISAの最も効率的な活用法、特に「成長投資枠で何を買うべきか」という問題を追求してみることにします。



 NISA制度はこう変わる

それでは最初に、NISAがどういう制度で、来年から何が変わるのか、ということをざっくりおさらいしておきましょう。

ご存じの通り、現行のNISA制度には「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。1人の人間が両方同時に利用することはできないので、好みに応じてどちらかを選ぶことになっています。

一般NISAの場合、年間の非課税投資枠は120万円。証券会社に開設したNISA口座を使い、この金額の範囲内で株や投資信託を購入すると、5年間は非課税で運用することができます。

例えば、120万円で買った株が130万円に値上がりした状態で売却した場合、普通なら10万円の利益の約20%にあたる約2万円を税金として取られてしまい、実際に手にできる利益は8万円だけです。しかしNISAなら税金がかからないので、10万円の利益をまるまる懐に入れることができます。

また、NISA口座で購入した株から5万円の配当金が出た場合、普通なら約20%にあたる約1万円を税金として抜かれて4万円しか懐に入りませんが、NISAなら5万円の配当金をそっくりそのまま受け取ることができます。

一方、つみたてNISAの場合、年間の非課税投資枠は40万円。一般NISA1/3 しかありません。しかも購入できるのは、金融庁に認められた一部の投資信託だけなので、投資先の選択肢は狭まります。その代わり、非課税期間は20年間と一般NISA4倍。これが大きなアドバンテージとなっています。

このように、一般NISAとつみたてNISAには一長一短があり、どちらを選ぶかはなかなか悩ましい問題でした。

しかし、こんな悩みももうすぐなくなります。来年から始まる新NISAでは、この2つが統合され、より使いやすくなるからです。

NISAの特徴を簡単に説明するとこんな感じです。 

   年間の非課税投資枠は360万円。このうち120万円は、金融庁が認めた投資信託の積み立てに限定された「つみたて投資枠」(つみたてNISAを受け継いだ部分)。残りの240万円は、株でも投資信託でもETFでも好きなものを買ってよい「成長投資枠」(一般NISAを受け継いだ部分)となっている。

   非課税で運用できる期間の縛りはない。

   非課税保有限度額(1人の人間が非課税で投資できるトータルの金額)は1800万円。 例えば、毎年360万円ずつ投資信託を買い続けると、5年で非課税保有限度額に達することになり、それ以上の新たな購入はできなくなる。

   ただし、非課税保有限度額に達した人でも、NISA口座にある投資信託や株を売却すると、その分だけ空きが生まれ、翌年以降に再び株や投資信託を購入できるようになる。 

以上です。

特筆すべきは①と②でしょう。

年間の非課税投資枠が一般NISA3倍、つみたてNISA9倍に激増するうえ、本人が生きている限り非課税運用をずっと続けることができる。これこそ、「神改正だ!」と個人投資家たちがもてはやす所以です。

では、この新制度を活用してどんな投資をやるべきか。本題に入っていきましょう。

つみたて枠で買うべき投資信託

まず、年間120万円のつみたて投資枠の使い方は議論の余地がないでしょう。金融庁が認めた投資信託の中から、投資対象を選んでひたすら積み立てるだけですから。

ここで選ぶべきは、米国株式とか、先進国株式とか、全世界株式とかに広く浅く投資するインデックスファンド。もちろん、売買手数料がかからず、信託報酬が安いものを選びます。そして、できれば純資産総額が大きいもの。

具体名を挙げるならこんな感じです。



まあ、このあたりであれば、どれを買ってもハズレはないでしょう。

そして、忘れちゃいけないのが、これらのファンドを注文する時に分配金の設定を「再投資型」にしておくこと。つまり、お小遣いのように時々分配金を受け取るのではなく、すべての分配金を再び投資にまわして資産を成長させていくというわけです。

このようにして積み立てたインデックスファンドを、目先の値動きに一喜一憂することなく20年・30年と寝かせておく。そして、十分に成長させた後で、必要に応じて売却しながら老後資金をまかなう。これがインデックス投資の基本戦略です。

普通なら売却時に値上がり益の約20%を税金で持っていかれるところですが、NISA口座で運用していたインデックスファンドであれば値上がり益もまるまる懐に入る。また、今回の制度改正によって死ぬまでずっと非課税運用できるようになるわけだから、長期運用を基本とするインデックス投資にとっては最高の環境と言えるでしょう。

問題は成長投資枠をどう使うか

さて、問題は、年間240万円の成長投資枠をどう使うかです。

恐らく個人投資家の中には、この枠を使って中短期の個別株取引をやりたがる人が出てくるでしょう。なぜなら、新NISAには前述の④の特長があるから。すなわち、いったん購入した株を売却すると、非課税保有限度額に再び空きが生じるという特長です。

これにより新NISAでは、値上がりした株を売って利益確定し、また別の株を買って値上がりを狙うという選択肢が生まれることになります。当然、値上がり益に税金はかからないから、通常の短期取引より儲けやすいと言えます。


しかし、当然のことながら、僕はこういう投資をやるつもりはありません。

なぜなら、安い時に買って高い時に売るという作業は、言うほど簡単じゃないから。「今が底だ」と思って買ってもさらに下がることはあるし、「今が天井だ」と思って売ってもまだまだ上がって悔しい思いをすることもある。「俺には相場が読める!」という絶対の自信がある人以外にはおすすめできません。

利確なんて考えるな

また、株の売却によって非課税保有限度額に空きができたとしても、実際に新たな株を買うことができるのは翌年からです。それまでの間は、非課税枠に空きができたままになるわけだから、新NISAの効率的な活用法とは言えません。だから、「中期短期の取引はするな。利益確定なんて考えない方がいい」というのが僕の意見です。(※これはつみたて投資枠についても言えることです。)

さらに言えば、仮に相場を読む才能があったとしても、買い時・売り時を見極めるために相場の動きや企業業績をいちいちチェックするのは面倒くさい。そもそも僕が理想とするのは、極力手間をかけずに不労所得を得ることだから、こういう投資法は性に合いません。

というわけで、有力な選択肢として浮上するのは、長期保有を基本とするインデックス投資と高配当株投資の2つ。ここからは両者を徹底比較してゆきます。

インデックス投資vs.高配当株投資

インデックス投資については、今さら説明するまでもないでしょう。

やることは、さきほど説明した「つみたて投資枠」と全く同じ。信託報酬の安いインデックスファンドを買って、ひたすら持ち続けるだけです。

一方、新NISAを使った高配当株投資も、なかなか魅力のある選択肢です。

毎年の成長投資枠で高配当株を買い続ければ、5年後にはトータルで1200万円分の高配当株を非課税運用することになります。仮に配当利回りが4%なら、毎年48万円の配当金が懐に入ってくる計算です。

この48万円は課税所得じゃないから確定申告も不要。従って、配当収入を確定申告した影響で健康保険料がアップするなどといった副作用の心配もありません。なかなかおいしい話です。

こうしてみると、毎年のつみたて投資枠でインデックスファンドを買い、成長投資枠では高配当株を買うという選択肢もアリかな、という気がしてきそうです。

しかし、より突き詰めて考えると、この方法は効率的とは言えまえん。僕の結論は「成長投資枠もやはりインデックス投資一択」ということになります。

その理由をこれから説明していきましょう。

壺の中の資産量を常に最大に!

NISA口座というのは、例えて言うと、税金がかからない状態で資産を増殖させることができる魔法の壺みたいなものです。


その壺に外から注ぎこむことができる資産の量は制限されていますが、いったん注ぎこんでしまえば、壺の中でいくら資産が増殖しようと、持ち主が望まない限りあふれ出すことはありません。こういう性質を持った壺だと考えてください。

とすれば、最も賢い選択は、この壺の中にできるだけ早く、可能な限りの資産を注ぎこみ、その状態でできるだけ長く寝かせておくことです。言い換えれば、壺の中の資産量を常に最大に保っておくことが大切です。

この視点で考えると、配当金を受け取るという行為は、あまり褒められたことではありません。せっかく壺の中ですくすく育ちつつある資産の一部を切り離し、税金が存在する外の世界へ引っ張り出しているからです。

もし、この配当金をそのまま壺の中に残しておけば、より効率的に増殖させることができるのに……。

資産の増え方をシミュレーションすると…

ここで少しシミュレーションしてみましょう。

5年間の成長投資枠で1200万円分のインデックスファンドを買った場合と、同じく5年間の成長投資枠で1200万円分の高配当株を買った場合の比較です。

話を単純にするために、インデックスファンドには毎年4%の値上がりが、 高配当株には毎年4%の配当が期待できるとしておきます。もちろん、両方とも税金はかかりません。

これらを10年間持ち続けた場合、 あなたの手元の資産はどうなるか?

 

まずは高配当株のケース。

1年後 高配当株1200万円分+配当金48万円

2年後 高配当株1200万円分+配当金累計96万円

3年後 高配当株1200万円分+配当金累計144万円

4年後 高配当株1200万円分+配当金累計192万円

5年後 高配当株1200万円分+配当金累計240万円

6年後 高配当株1200万円分+配当金累計288万円

7年後 高配当株1200万円分+配当金累計336万円

8年後 高配当株1200万円分+配当金累計384万円

9年後 高配当株1200万円分+配当金累計432万円

10年後 高配当株1200万円分+配当金累計480万円

……というわけで、トータル1680万円分の資産が手に入ります。

 

次にインデックスファンドのケース。(※1万円未満の端数は省略)

1年後 インデックスファンド 1200万円×1.041248万円

2年後 インデックスファンド 1248万円×1.041297万円

3年後 インデックスファンド 1297万円×1.041349万円

4年後 インデックスファンド 1349万円×1.041403万円

5年後 インデックスファンド 1403万円×1.041459万円

6年後 インデックスファンド 1459万円×1.041518万円

7年後 インデックスファンド 1518万円×1.041579万円

8年後 インデックスファンド 1579万円×1.041642万円

9年後 インデックスファンド 1642万円×1.041707万円

10年後 インデックスファンド 1707万円×1.041776万円


というわけで、高配当株投資1680万円に対し、インデックス投資1776万円。

96万円差でインデックス投資の勝ち!

結論:インデックスファンドを全力で買え

まあ、あまりにも条件を単純化した比較なので、いろいろ突っ込みどころはあるでしょうが、要は「単利運用と複利運用の差は大きい」ということです。

もちろん、高配当株投資には数字だけでは測れない利点(キャッシュフローによる安心感など)も沢山あります。しかし、「自分に与えられた貴重な非課税枠を使う以上は、数学的に最も効率的な方法を選択するのが一番」というのが僕の意見です。

よって、僕は来年以降、毎年360万円の非課税投資枠(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)を全てインデックスファンドの購入に充て、5年後に非課税保有限度額の1800万円を使い切った後は、これらのインデックスファンドを老後まで保有し続けるという戦略を取るつもりです。

日々の生活費や娯楽費は、サラリーマン時代に蓄えた預金の取り崩しや、特定口座を使った高配当株投資などで賄えばいい。虎の子のNISA口座ではインデックス投資で資産を最大化させることのみに集中する――――。

以上が、僕の考える「最も効率的な新NISAの活用法」です。

意外性がなくて、肩透かしを食ったと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、考えれば考えるほど、僕にはこれが最良の方法だと思えてきます。来年からNISAでどんな投資をしようかと迷っている方は参考にしてみてください。


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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