今の日本で最もマシな安全資産置き場はどこか

2023/08/05

個人向け国債 資産運用

投資の重要性が叫ばれるようになって久しい昨今ですが、まともな感覚の持ち主なら自分の全財産を株や不動産に突っ込むということはしないでしょう。

財産の何割かは安全資産として確保し、残る部分でリスクを取った投資をする。これが資産運用のセオリーです。

では、投資に回さない安全資産の置き場所として、現時点で最も優れている金融商品ってなんだろう?

今回は久しぶりにこの問題を考えてみます。



ここでいう安全資産とは、円ベースで元本保証された値動きのない資産のことです。候補となる金融商品は次の3つ。

・普通預金 ・定期預金 ・個人向け国債

なんとも地味な顔ぶれですが、こればかりは仕方ありません。

金(ゴールド)や不動産は株式と同じく常に価格が変動するし、外貨預金や外国債には為替リスクがある。円建ての社債も倒産リスクを考えれば安全資産とは言い難い。

それから貯蓄型保険なんかは、「保険会社にあれやこれやと手数料を抜かれて全然割に合わない」と考えているので検討対象から外しました。

その結果、預け先が破綻しても預金保険機構によって1000万円まで保護される銀行預金と、日本が国家破産しない限り安全だと言われている国債に候補が絞られるわけですが、ご存じの通り、今の日本ではこれらは軒並み利率が低い。

とはいえ、低いなりにも差はあるし、わずかではありますが利率も少しずつ変化しています。そこを徹底的に比較して、少しでも有利な安全資産置き場を見極めようというのが、この記事の狙いです。


個人向け国債の金利が9年ぶりの高水準に

さて、これら安全資産置き場の「金利情勢」に最近動きがありました。

日銀の植田総裁が打ち出した金融政策修正により、このところ年0.33%以下で推移していた個人向けの変動金利型10年国債(略称「変動10」)の金利が、一気に0.39%(9月発行分の初回適用利率)に上昇したのです。

このニュースを報じた主要メディアは僕の知る限り共同通信時事通信だけですが、個人的にはとても気になるニュースでした。というのも、この0.39%という数字、2014年7月以来9年ぶりの高水準だというのです。

ここで、個人向け国債や銀行預金の金利をめぐる近年の動向をおさらいしておきましょう。


僕が会社を早期退職して資産運用を始めた3年前、つまり2020年当時、変動10の金利はわずか年0.05%でした。これは「世の中がどんなに低金利になっても、この利率は保証するから国債を買ってね」と財務省が約束している最低ラインです。

しかし、これでも3大メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)をはじめとする大多数の銀行の普通預金や定期預金と比べれば、随分マシな数字でした。

一方、ネット銀行の中には当時、「高金利」を売りにして3~5年ものの定期預金に年0.3%前後の金利を設定しているところがチラホラありました。例えば、オリックス銀行の5年定期の金利は年0.35%(税引き前)と、変動10の7倍でした。

だから、この時点で僕には国債を買う理由がありませんでした。安全資産置き場としてはネット銀行の定期預金が最適だと考えていたからです。

ところが、2022年の初めごろから変動10の金利がジワジワ上昇し始めました。それでも、上昇幅は微々たるもので、年末の段階ではまだ0.17%(12月募集分)にとどまっていました。

しかし、このころ日銀の黒田総裁(当時)が金融緩和路線の事実上の修正を表明したことで状況は一変。今年に入ると変動10の金利は一気に0.33%(1月募集分)まで急上昇したのです。

一方、ネット銀行の預金金利はこの3年間で逆に低くなる傾向にあり、この時点で多くのネット銀行は変動10に追い抜かれてしまいました。

ただ、今年4月の時点でも、SBJ銀行の5年定期とオリックス銀行の7年定期だけは、ともに0.35%の金利を掲げ、わずかに変動10を上回っていました。

それが、今回の植田総裁の政策修正によって一気に逆転してしまったわけです。



国債に抜かれたネット銀行の預金利率

それではここで、高金利で知られる主なネット銀行と個人向け国債(変動10)の8月現在の利率を一覧表で比較してみましょう。参考までに、3大メガバンクの利率も一緒に紹介しておきます。

(カッコ内は1000万円預けた場合の1年当たりの税引前利息額)

 

・3大メガバンクの普通預金 0.001%(100円)

・3大メガバンクの定期預金 0.002%(200円)

あおぞら銀行の普通預金  0.20%(20000円)

UI銀行の定期預金      0.30%(30000円)※1~3年もの

SBI新生銀行の定期預金 0.30%(30000円)※1年もの

オリックス銀行の定期預金 0.30%(30000円)※5年もの

オリックス銀行の定期預金 0.35%(35000円)※7年もの

個人向け国債(変動10)   0.39%(39000円)※9月発行分


安全資産は「変動10」の一択

いかがでしょうか。

これを見る限り、現時点で最も優れた安全資産置き場は個人向け国債(変動10)だ、と言い切ってしまって大丈夫でしょう。

さらに言えば、今後、黒田総裁時代の大規模金融緩和路線が段階的に修正されていくにつれて、世の中の金利は徐々に上昇していく可能性が高い。そうなるとますます、利率が長期間固定される定期預金より、半年ごとに見直される変動10の方が有利になると思われます。

(※変動10の特長や賢い買い方はこちらの記事で解説しています。)

もっとも、インフレが急速に進む今の世の中、わずか0.39%程度の利率では実質的な資産価値が目減りしてゆくのは避けられません。そういう意味では、国債は「最も優れた安全資産置き場」というより「最もマシな安全資産置き場」です。

冒頭でも述べたように、「財産の何割かは安全資産として確保し、残る部分でリスクを取った投資をする」というのが資産運用のセオリー。守りと攻めを使い分け、トータルでインフレに打ち勝たなければなりません。

ちなみに僕の場合、攻めはインデックス投資ということになります。


以上で今回の記事はおしまいです。

資産運用と言えば、どうしてもリスク資産の運用先ばかりに目が向きがちですが、僕は車の両輪として安全資産の置き場所にも徹底的にこだわるべきだと考えています。個人向け国債やネット銀行の金利動向には今後も注目し、新たな動きがあれば記事にしてゆくつもりです。


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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